「三菱・パジェロエボリューション」の版間の差分

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パジェロ エボリューションPAJERO EVOLUTION 、通称:パジェロエボ)はパジェロをベースにパリダカを筆頭とするクロスカントリーラリー参戦のために開発されたマシンである。本稿では便宜上市販されたパジェロエボを「初代」、パリダカ専用で市販されない現行のパジェロエボを「2代目」とし、以後大きくモデルチェンジした新バージョンが登場した場合は「○代目」として区別する。

初代 (1997年‐1999年)[編集]

E-V55W型

シャーシ・ボディ[編集]

  • ボディは、ショートボディのパジェロメタルトップ(ZR-S)を改良したこのモデルが採用された。
  • シャーシには、ラダーフレームが採用された。また、4輪独立懸架式の新サスペンションに対応するべくクロスメンバーの形状を変更したことにより、曲げ剛性が47%、ねじり剛性は33%もアップさせ、操縦安定性と乗り心地を向上させた。

エンジン[編集]

  • エンジンは6G74 型 V型6気筒DOHC24バルブ 3,497ccを搭載するが、GDIに代わり可変バルブ機構"MIVEC"を採用してパワーアップ、最高出力280馬力、最大トルク35.5kgmを発揮した(当時パリダカの市販車改造部門にパジェロで参戦していたプライベーターも4G63Tから6G74-MIVECバージョンに換装)。

サスペンション[編集]

  • サスペンションは、トレッドを前後とも1,590mmに拡大することにより、フロント ダブルウィッシュボーン・コイルスプリング独立懸架、リア ダブルウィッシュボーン・コイルスプリング独立懸架が採用された。各アームのロングスパン化により、約240mmというロングホイールストロークを実現している。

四輪駆動システム[編集]

  • 世界初のスーパーセレクト4WDが採用された。この駆動システムは、トランスファーにビスカスLSD付きセンターデフを追加し、4WD時にはセンターデフ式フルタイム4WDとほぼ同等の舗装路での走行性能を有している。 センターデフにはデフロック機構を装備し、直結4WDと同等の悪路走破性も持つため、パートタイム4WDとフルタイム4WDの長所を兼ね備えたシステムである。また、走行中でも駆動方式が変更可能で、前後輪への駆動力の配分は50:50であり、必要に応じて100:0に近い配分まで変化することが可能となる。

歴史[編集]

1997年10月
  • 1997年から2001年のパリダカはプロトタイプ(競技専用モデル)とガソリンターボエンジンでの参戦が禁止され、ホモロゲーションを取得すべく開発された。市販価格はMT車で370万円。
  • トランスミッションは5速MTとINVECS-IIスポーツモードAT(5速)。アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)が4チャンネル式にバージョンアップ。
  • ヘリカルギヤ式LSDに、ビスカスカップリング(VCU)を装着しハイブリッドLSDを採用することにより、悪路走破性、オンロードでの旋回性を向上させている。
  • エクステリアにはフォグランプをビルトインした大型フロント&リヤバンパー、大型のオーバーフェンダー、アルミボンネットフード、アルミスキッドプレートを採用し、インテリアにはカーボン調パネル、本革巻ステアリング(ブラック)、シートにはレカロが採用された。
  • 1998年のパリダカではジャン・ピエール・フォントネがこのマシンで総合優勝を飾っている。
グレード エンジン型式 エンジン 排気量 最大出力 最大トルク 変速機 価格
エボリューション 6G74(MIVEC) V型6気筒DOHC24バルブ 3,496cc 280仏馬力/6,500rpm 35.5kg・m/3,000rpm 5速MT 3,740,000円
5速AT 3,908,000円

2代目 (2003年-2008年)[編集]

シャーシ・ボディ[編集]

エンジン[編集]

  • エンジンは、MPR11~MPR12までは6G74型をベースに新開発したV型6気筒DOHC24バルブMIVEC(ドライサンプ式オイルシステム付) 3,997cc 最高出力270馬力 最大トルク42.5kg・mを搭載した。MPR13型からは出力・トルクともにダウンしている。(255馬力 42.0kg・m)
  • MPR14型からは、新開発のV型6気筒ディーゼルターボ(高圧コモンレール) 2,997cc最高出力260馬力以上最大トルク66.3kg・m以上が新たに搭載された。

サスペンション[編集]

四輪駆動システム[編集]

歴史[編集]

  • 2001年にパリダカのクラス分けが変更され、市販車改造クラスとプロトタイプクラスが統合される形でスーパープロダクションクラスが新設された。これに伴い再び市販車ベースからオリジナルマシンへと方向転換が図られ、そのため初代E-V55Wのようなホモロゲーション用市販車は存在しない。増岡浩が初めてパリダカで総合優勝した2002年はマシンがまだ開発中だったため市販車(3代目パジェロメタルトップがベース)で参戦したが、翌2003年から2代目エボで参戦している。
  • デザインは市販のパジェロシリーズとは全く異なっており、当時三菱自動車のデザイン部門のチーフに着任したオリビエ・ブーレイがエクステリアデザインを担当したもので、市販車のパジェロとの共通点はない。どちらかといえば初代パジェロエボが登場する以前のパジェロプロトタイプに近い。
  • 2005年のパリダカに参戦するモデルから、トランスミッションを高低切り替え機構付きの5速マニュアルから6速マニュアルに変更(4WDトランスファー部分はファイナル高低切り替えを存置)、さらに車体全体の空力を見直し、リアウイングを廃するなど、メカニズム等を大幅改良したものを採用した[1]
  • ブレーキにはブレンボ製6ポッドキャリパー+ベンチレーテッドディスクを採用している。
  • 関連して、日本のモーターショーなどには登場しなかったが、EUでは、市販用にテスト製作されたパジェロエボリューション2×2という車種が存在している[2]
ラリーカー エンジン 排気量 最大出力 最大トルク 変速機 サスペンション 駆動方式
パジェロエボリューション(MPR11) V型6気筒 DOHC24バルブMIVEC(ドライサンプ式オイルシステム付) 3,997cc 270仏馬力/5,500rpm 42.5kg・m/4,500rpm リカルド製6速シーケンシャルマニュアル 前後:独立懸架・ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング フルタイム4WD 機械式センターデフロック
パジェロエボリューション(MPR12) 前後:独立懸架・ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング+アンチロールバー フルタイム4WD デフロック付セルフロッキングデフ
パジェロエボリューション(MPR13) V型6気筒 DOHC24バルブMIVEC(ドライサンプ式オイルシステム付)(φ31mmリストリクター付) 255仏馬力/4,500rpm 42.0kg・m/3,500rpm リカルド製5速シーケンシャルマニュアル
パジェロエボリューション(MPR14) V型6気筒ディーゼルターボ(高圧コモンレール) 2,997cc 260仏馬力以上 66.3kg・m以上


脚注[編集]

  1. 2005年型パジェロエボリュ-ション紹介(三菱自動車工業)
  2. ジェネーブモーターショーのパジェロプロトの紹介(ドイツ三菱)

関連項目[編集]