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2013年9月5日 (木) 10:59時点における最新版
水戸事件(みとじけん)は、1995年に茨城県水戸市で発覚した知的障害者に対する暴行・強姦事件。裁判の過程で、行政・司法当局の知的障害者に対する無理解が明るみに出ることとなった。
「水戸アカス事件」とも言う。
1998年には、この事件をモデルにしたドラマ「聖者の行進」がTBSで放送されている。
事件の概要[編集]
茨城県水戸市の段ボール加工会社「アカス紙器」(のち「水戸パッケージ」に改称)は積極的に知的障害者を従業員として雇用し、従業員全員を会社の寮に住まわせていた。アカス紙器の社長・赤須正夫は、障害者雇用に熱心な名士として地元では尊敬されていた。
しかし1995年10月、アカス紙器が障害者雇用により国から交付される特定求職者雇用開発助成金を受け取っていながら、実際には知的障害者の従業員に対してほとんど賃金を支払っていないことが発覚し、翌年赤須は詐欺容疑で逮捕された。
詐欺容疑で赤須の近辺を捜査する過程、彼が長年にわたり、従業員の知的障害者に対して虐待を行っていたことが判明した。その内容は、角材や野球のバットで殴る・両膝の裏にジュースの缶や角材を挟んで正座させ、膝の上に漬物石を乗せて長時間座らせておくといった拷問ともいうべきものであった。知的障害者の従業員たちは満足に食事を与えられておらず、時にはタバスコをふりかけた白飯や腐ったバナナなどを食べさせられることもあったという。さらに知的障害者の女性従業員に対する強姦も頻繁に行われ、被害者は10人近くにのぼると言われている。
水戸警察署は、詐欺事件だけでなく知的障害者に対する暴行・強姦事件に関しても捜査を開始したが、被害を受けた日時や状況を正確に証言出来る被害者が少なく、「公判を維持できない」という理由で警察も水戸地方検察庁も立件に消極的であった。結局、赤須は詐欺罪および暴行2件・傷害1件で起訴され、それ以外の暴行・強姦事件はすべて不起訴となった。
裁判[編集]
1997年3月28日、水戸地方裁判所は赤須に対し「懲役3年執行猶予4年」の判決を下した。松尾昭一裁判長が実刑をつけない理由として、赤須が「障害者雇用に熱心に取り組んだ」ことをあげるなど、判決の内容は被害者の家族や支援者の感情を逆撫でするものであった。
判決に激昂した被害者の家族や支援者は、裁判所から足早に立ち去ろうとする赤須の乗った自動車を取り囲みその一部を破損させたりして、器物損壊罪で支援者1名が現行犯逮捕された。また取り囲んだ際、赤須やその弁護士である種田誠(元参議院議員、社会党)のネクタイをつかんだりしたとして、代表的立場であった女性支援者が暴行容疑で後日逮捕された。さらに被告人を車の中から解放しなかったとして、当日の混乱の際に警察官や裁判所職員と折衝を行った支援団体の事務局長が監禁容疑で逮捕され、すでに勾留されていた現行犯逮捕の支援者と女性支援者も監禁罪で再逮捕された。3名ともに起訴後も長期勾留された中で裁判が行われ、現行犯逮捕された支援者は執行猶予付き判決であったが、無罪を訴えた女性支援者と事務局長の男性に対しては実刑判決が下され、2003年4月15日に確定している。
支援者2名を被告人より重い刑罰で処罰したことに対しても、支援運動つぶしの「不当逮捕・不当判決」といった声が関係者から出ている。
不起訴のため刑事裁判では審理されなかったことに対して不満を持った女性の元従業員3名は、赤須を民事裁判で訴えた。赤須は性的虐待の事実について全て否認したが、水戸地方裁判所は原告の訴えを全面的に認め、2004年3月31日、赤須に対し被害者3名に1500万円の賠償金を支払うよう命ずる判決を下した。赤須は控訴したが、東京高等裁判所は同年7月21日控訴を棄却した。赤須は上告を断念し、判決は確定している。
参考文献[編集]
- 絶対、許さねえってば―水戸事件(障害者差別・虐待)のたたかいの記録(水戸事件のたたかいを支える会・現代書館)ASIN: 4768469035
- 水戸事件3・28弾圧刑事裁判記録集(水戸事件のたたかいを支える会)
- 福祉を食う―虐待される障害者たち(毎日新聞社会部取材班・毎日新聞社)ASIN: 4620312355