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2012年10月23日 (火) 23:38時点における版

殺人さつじん、俗に人殺しMurder)とは人間を絶つこと。

特に、人間による殺意によるものを指すことが一般的である。人以外の主体によるものでもいうことがある。

自ら命を絶つことは自殺とされ、これと区別するため、他殺たさつ)と呼ばれることもある。

概説

殺人は近代社会のいかなる法域においても最も重い犯罪として規定されており、法域によっては死刑に処される可能性がある。犯罪としての殺人については殺人罪を参照。

法治国家がその誕生と共に厳しく取り締まるようになった人間の反社会的行為の内の重要な一つが、殺人である。

古代には法律以上に社会に深く浸透していた宗教においても、殺人は忌むべきもの、犯してはならない戒律として多くの宗教に規定されている。旧約聖書にはカインアベルを殺したのが最初の殺人と書かれている。ユダヤ教においてモーゼが受けた「十戒」でも、信仰と親への孝行を除く社会生活上の禁忌五つのうち真っ先に採り上げられている。仏教の五戒においても不殺生戒があげられている。

すべての殺人が違法ではない。死刑によるなど法による殺人、正当防衛などやむをえない事情による殺人、戦争による殺人などである。その一方、殺人に対する嫌悪感も強く、理想的には死刑廃止や戦争の廃止を求める声も少なくない。ただしその場合でも、自分が生きるか死ぬかという極限状態における正当防衛だけは認めざるを得ないのが実情である。

戦争における殺人を一般の刑法で治めることは不適当なので一般に軍法が適用される。 一部は戦争犯罪として国際的に罰せられる可能性がある。国際法が根拠とされることが多いが、 しばしば法的根拠を欠く場合があったり国家間の政治的駆け引きの要素が強いので注意が必要である。

また、国家元首や政府の高官など権力を持つ者が自国民を大勢殺害した場合、その国の法律では調査・訴追・公正な裁判を行うことが極めて困難である。そのため国際刑事裁判所が設けられた。一方で、一部の国はこの枠組みに参加しておらず、更にアメリカ合衆国は参加しないだけでなく、アメリカ国民を国際刑事裁判所に引き渡さないことを約する免責協定を結ぶよう各国に要請するなど、その趣旨に自国民を加えることに反対している。このため、その実効性を疑問視する声もある。

日本も長らくこの枠組みに参加しなかったが、国内法の整備が整い平成19年(2007年7月17日国際刑事裁判所ローマ規程を批准した。

件数

も参照 ICPO調査による2002年の統計では、日本では年1,871件の殺人が発生しており、人口10万人あたりの発生率は1.10件で先進国の中ではアイルランドと並んで最も低い。

他国の発生率はアメリカ合衆国5.61件、イギリス18.51件、ドイツ3.08件、イタリア3.75件、フランス3.64件、スウェーデン1.87件、オーストラリア3.62件、スイス18.45件、ロシア22.21件[1]。なお、日本の殺人件数は毎年減少傾向にあり、1958年(昭和33年)には2,683件だったものが2007年には戦後最低の1,199件を記録した[2]

警察庁のまとめによる2008年の殺人事件(未遂含む)は前年比8.4%増の1300件であった。[3]

殺人の起源説

殺人あるいは暴力行為の説明としていくつかの説が考え出された。

一つは進化論の観点から、種内淘汰の一種であるという説。人類類人猿から進化したことは確実であり、動物であった段階から受け継がれたとする。動物のオスメスの獲得やリーダーの地位などを巡って種内闘争を行う。これに勝てる者が多くの子孫を残すことによって進化(適応化)を促す。

その際、単なる威嚇に留まらず相手のオスが致命傷を受けることがあり、殺人(同種殺害)の淵源とする。近年は激しい闘争よりも、威嚇段階で留まる方が有益であると考えられるようになっている。一般に肉食獣など殺傷力が強い武器をもつ動物ほど反撃を恐れ同族同士の実力行使に慎重である。

もう一つは生化学の立場から、男性ホルモンテストステロンが暴力性を誘発するというもの。テストステロンは筋力増強に繋がるが、一方攻撃性を増すという指摘があり、攻撃行動が重要性を持つ軍人暴力、殺人犯の大半が男性であることも統計的にこれを裏付けている(外に向ける攻撃ではないが、自殺者も男性が多い)。

進化論的にもオスはメスや縄張りをめぐるオス同士の闘争、あるいは仲間を守るために角などが発達し、攻撃性もその際は有益であったとされる。文明社会になってその必要性は薄くなり、負の面となって表れるという因果なものになっている。

殺人が起きる理由

大別して人間の感情の起伏がそれを望む場合と、利害関係がその人間の人格の破壊を試みる場合が考えられる。

一般的な理由として、恨みが高じて殺意が沸くケースがある。人間同士はお互いの間に親睦と不和などの関係を確立するが、結果対立することになることは少なくない。敵意の程度はどうあれ、殺人は個人にとって一つの選択肢であり、解決策である。ただし、現在の法体系が殺人を個人レベルでの紛争の解決策として認めることはほぼ無いだろう。

過去においては決闘など、個人レベルの紛争に対立する相手の殺害を含めた対処の仕方も珍しいものではなかったようである。実際の殺人でも、まったくの見ず知らずの者から殺されるより、家族や知人など何らかの感情の蓄積がある者から殺される確率の方が高い[4]

また、過去においては在日朝鮮人への暴行殺人、またアメリカにおいてもKKK(クー・クラックス・クラン)による黒人のリンチ殺人、宗教対立による殺人など、認識可能な「違い」が殺人の理由になったケースもある。

強盗などの際の証拠隠滅のために目撃者を殺害するケースなどが殺人の動機とされるが、他方人を殺す行為そのものに一種の快楽を求めて人を殺害(快楽殺人)する場合もまれにある。

また、集団的に武装した人間が一定のコミュニティーに対して破壊行為を仕掛ける「戦争」においては、もっとも大きな規模での「殺人」が可能であると考えられる。

その動機に関しては恐らく一定のコミュニティー内で裁量権が高い個人やグループの判断での利害の調整であると思われる。 もしくは税金というそれを払う人間にとって説明義務の低い集金システムによって集められた金を求め、軍事産業、もしくは建設企業が「名目」を求めて政府に戦争を焚きつけるという可能性も考えられる。 組織だってかつ殺人をそのものを目的とするため、一般の犯罪より効率よく甚大な数の殺人が行われる。

金銭のケース

  • 夕張保険金殺人事件 - 夫婦が保険金目的で自社の従業員宿舎に放火を依頼。
  • 練馬一家5人殺害事件 - 競売物件の取り引きのトラブルから一家5人殺害して遺体をバラバラに切断して証拠隠滅を図ろうとした事件

痴情のもつれのケース

怨恨のケース

  • 大阪産業大学付属高校同級生殺害事件 - 加害者は被害者から、授業中に自慰行為を強制されるなどの性的いじめを受けており、その報復として起こった。
  • ピアノ殺人事件 - 加害者は被害者にピアノの音がうるさいからといって注意をしたにもかかわらず、被害者は反省の態度を示していなかったため、凶行におよんだ。
  • 山形一家3人殺傷事件 - 加害者は被害者に服を脱がされるなどの性的いじめを受けており、その報復として起こった。

証拠隠滅のケース

快楽を求めたケース

  • 神戸連続児童殺傷事件 - 犯人は犯行声明文において「殺しが楽しい」という旨のコメントを載せている。
  • 大久保清による8件の殺人事件
  • 東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件 - 動機は事実上解明されていないが、最高裁判決文など理由の一つとして考えられている。
  • 自殺サイト殺人事件 - 犯人は自殺希望者を自殺サイトで見つけて、自殺希望者を自殺に見せかけて殺していたという。
  • 大阪姉妹殺害事件 - 犯人はかつて母親を金属バットで撲殺した際に性的興奮を覚え射精したこと、その事が忘れられずまた血が見たいと思ったという旨の供述をと取り調べ時にしている。

(自己弁護あるいは正当化させる)正義のケース

古今東西殺人をする最も多い動機にあげられる概念“正義”。この正義を利用し戦争、宗教対立、内ゲバ等対立する人間が多く殺された。

その他のケース


脚注

  1. 犯罪率統計-ICPO調査
  2. 少年犯罪データベースドア:平成19年版より
  3. 時事通信 (2009-01-15) 時事通信 昨年の殺人事件8・4%増=刑法犯全体は6年連続減-警察庁 2009-01-15 [ arch. ] 同日
  4. 本川裕 (2008-01-28) 本川裕 図録▽犯罪者と被害者との関係(犯罪種類別) 社会実情データ図録 2008-01-28 [ arch. ] 2008-12-04

関連項目

Wiktionary
ウィクショナリー殺人の項目があります。


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