「黄金比」の版間の差分
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TomoyukiMogi GoldenRatio DiagonalLine.gif|[[黄金長方形]]から最大正方形を切り取っていった図(残った長方形も黄金長方形になる)。 | TomoyukiMogi GoldenRatio DiagonalLine.gif|[[黄金長方形]]から最大正方形を切り取っていった図(残った長方形も黄金長方形になる)。 | ||
TomoyukiMogi GoldenRatio SameAreas.gif|黄金数 {{mvar|φ}} について、{{math2|''φ''(''φ'' − 1) {{=}} 1}} を、面積で表した図。青線が、縦横の長さ {{math2|1, ''φ''}} の[[黄金長方形]]2個を表し、右上の赤網目部分が {{math2|''φ''(''φ'' − 1)}}、左下の赤網目部分が {{math|1}} を表す。 | TomoyukiMogi GoldenRatio SameAreas.gif|黄金数 {{mvar|φ}} について、{{math2|''φ''(''φ'' − 1) {{=}} 1}} を、面積で表した図。青線が、縦横の長さ {{math2|1, ''φ''}} の[[黄金長方形]]2個を表し、右上の赤網目部分が {{math2|''φ''(''φ'' − 1)}}、左下の赤網目部分が {{math|1}} を表す。 |
2022年11月26日 (土) 19:01時点における版
黄金比(おうごんひ、英:golden ratio)とは、次の値で表される比のことである
- 1 : <math>\frac{1+\sqrt{5}}{2}</math>
以下で述べるような数理的な性質は、有理数にならないこの値のみが持つ性質であり、有理近似等には基本的には意味が無い。「デザインを美しくする」などといった巷間よく見られる説については#用途の節を参照。小数に展開すると 1 : テンプレート:val あるいは テンプレート:val : 1 といった値となる。 黄金比は貴金属比の一つである(第1貴金属比)。
幾何的には、a : b が黄金比ならば、
- a : b = b : (a + b)
という等式が成り立つことから、縦横比が黄金比の矩形から最大正方形を切り落とした残りの矩形は、やはり黄金比の矩形となり、もとの矩形の相似になるという性質がある。正五角形の1辺と対角線との比は黄金比に等しい。数列 テンプレート:math2 は、等比数列をなす。そのため、(中項 b と末項 a + b の比という意味で)中末比(ちゅうまつひ)とも呼ばれる。
線分を2つに分け、短い部分と長い部分の長さの比が、長い部分と全体の長さの比に等しくなるようにしたときの比であるため、外中比(がいちゅうひ、英:extreme and mean ratio)とも呼ばれる。黄金比で長さなどを分けることを黄金比分割または黄金分割(英:golden section または 英:golden cut)という。
黄金比における
- <math>\frac{1 + \sqrt{5}}{2}</math>
を黄金数(おうごんすう、英:golden number)という。しばしばギリシア文字の φ(ファイ)で表されるが、τ(タウ)を用いる場合もある。黄金数は、二次方程式 x2 − x − 1 = 0 の正の解である:
- <math>\varphi = \frac{1+\sqrt{5}}{2} = 1.6180339887\cdots</math>
目次
黄金数の性質
既約多項式
- <math>\varphi^2 = \varphi + 1</math>
- <math>\varphi = \frac{1 + \sqrt{5}}{2} = 1.6180339887\cdots</math>
- <math>\varphi^{-1} = \varphi -1 = \frac{-1+\sqrt{5}}{2} = 0.6180339887 \cdots</math>
黄金長方形では、(長辺 - 短辺) : 短辺 = 短辺 : 長辺 が成り立つことを表した図。
黄金長方形から最大正方形を切り取っていった図(残った長方形も黄金長方形になる)。
黄金数 φ について、テンプレート:math2 を、面積で表した図。青線が、縦横の長さ テンプレート:math2 の黄金長方形2個を表し、右上の赤網目部分が テンプレート:math2、左下の赤網目部分が 1 を表す。
黄金数 φ について、テンプレート:math2 を、面積で表した図。縦横の長さが テンプレート:math2 の黄金長方形(青線)において、斜線部分が等積となる。また、赤網目部分は テンプレート:math2 を表している。
連分数表示
- 黄金数は次のような連分数表示をもつ:
- <math>\varphi = 1 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{\ddots}}}} = [1;1,1,1,1,\cdots]</math>
- 次のような表示ももつ:
- <math>\varphi^{-1} = [0; 1, 1, 1, \cdots] = 0 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{1 + \ddots}}}</math>
- <math>\varphi = \sqrt{1 + \sqrt{1 + \sqrt{1 + \sqrt{1 + \sqrt{\cdots}}}}}</math>
級数表示
- <math>\varphi = \frac{13}{8} + \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1} \, (2n+1)!}{(n+2)! \, n! \, 4^{2n+3}}</math>
三角関数による表示
三角関数を使うと次のように表すことができる:
- <math>\varphi = 2\cos \frac{\pi}{5} =2\cos 36^\circ</math>
- <math>\varphi = 2\sin \frac{3 \pi}{10} = 2\sin 54^\circ</math>
- <math>\varphi = -2\sin 666^\circ</math>
- <math>\varphi = 1+2\sin \frac{\pi}{10} = 1+2\sin 18^\circ</math>
- <math>\varphi = 1+2\cos \frac{2\pi}{5} = 1+2\cos 72^\circ</math>
- <math>\varphi = \frac{1}{2} \csc \frac{\pi}{10} = \frac{1}{2} \csc 18^\circ</math>
- <math>\varphi^{-1} = 2\sin \frac{\pi}{10} = 2\sin 18^\circ</math>
- <math>\varphi^{-1} = 2\cos \frac{2\pi}{5} = 2\cos 72^\circ</math>
指数関数による表示
指数関数を使うと次のように表すことができる。
- <math>\varphi = e^{\,i\frac{\pi}{5}} + e^{\,i\frac{-\pi}{5}}</math>
黄金比に関する極限
- <math> \sum_{n=1}^{\infty} \frac{n}{\varphi^{2n}}=1</math>
フィボナッチ数列との関連
- 等比数列 テンプレート:math2 において、テンプレート:math2 より
- φn + φn+1 = φn+2(n は自然数)
が成り立つ。
- φ2 = φ + 1,
- φ3 = 2φ + 1,
- φ4 = 3φ + 2,
- φ5 = 5φ + 3,
- φ6 = 8φ + 5,
- ...
となり、係数にフィボナッチ数列が出現する。n番目のフィボナッチ数を Fテンプレート:sub とすると、φn は次のようになる。
- φn = Fテンプレート:sub φ + Fテンプレート:sub
幾何学的性質
半径の比が
- <math>( \varphi - \sqrt{\varphi} ) : 1 : ( \varphi + \sqrt \varphi )</math>
である3つの円が互いに外接する時、その3つの円の全てと外接する大小2つの円を描くことができ、それらを合わせた5つの円の半径の比は
- <math>({\varphi - \sqrt \varphi })^2 : ( \varphi - \sqrt{\varphi} ) : 1 : ( \varphi + \sqrt \varphi ) : ( \varphi + \sqrt \varphi )^2</math>
である。
ここで
- <math>\varphi - \sqrt{\varphi} = \frac{1}{\varphi + \sqrt \varphi}</math>
であり、隣接する円との半径の比が同じで、互いに密に接する円の列を螺旋状に無限に配置することができる。
(→デカルトの円定理)
半径 テンプレート:sqrt の円(青線)と半径1の円(緑線)が外接するとき、共通外接線2本の交点と半径1の円周上の点の距離で最短のものは、黄金数に等しい。
歴史
- 伝承では、古代ギリシアの彫刻家ペイディアス (Φειδίας) が初めて使ったと言われる。黄金比の記号φは彼の頭文字であるが、使われ始めたのは20世紀である。なお、τはギリシア語の「分割」に由来し、やはり20世紀に使われ始めた。
- 「黄金比」という用語が文献上に初めて登場したのは1835年刊行のドイツの数学者マルティン・オーム(オームの法則で有名なゲオルク・ジーモン・オームの弟)の著書『初等純粋数学』。また、1826年刊行の初版にはこの記載がないことから、1830年頃に誕生したと考えられる。
- 『ユークリッド原論』では第6巻の定義3で外中比の定義が記されている。
- 『ユークリッド原論』の第6巻の命題30で「与えられた線分を外中比に分ける作図法」が記されている。
黄金比の近似値
1.
6180339887 4989484820 4586834365 6381177203 0917980576 2862135448 6227052604 6281890244 9707207204 1893911374
8475408807 5386891752 1266338622 2353693179 3180060766 7263544333 8908659593 9582905638 3226613199 2829026788
0675208766 8925017116 9620703222 1043216269 5486262963 1361443814 9758701220 3408058879 5445474924 6185695364
8644492410 4432077134 4947049565 8467885098 7433944221 2544877066 4780915884 6074998871 2400765217 0575179788
3416625624 9407589069 7040002812 1042762177 1117778053 1531714101 1704666599 1466979873 1761356006 7087480710
1317952368 9427521948 4353056783 0022878569 9782977834 7845878228 9110976250 0302696156 1700250464 3382437764
8610283831 2683303724 2926752631 1653392473 1671112115 8818638513 3162038400 5222165791 2866752946 5490681131
7159934323 5973494985 0904094762 1322298101 7261070596 1164562990 9816290555 2085247903 5240602017 2799747175
3427775927 7862561943 2082750513 1218156285 5122248093 9471234145 1702237358 0577278616 0086883829 5230459264
7878017889 9219902707 7690389532 1968198615 1437803149 9741106926 0886742962 2675756052 3172777520 3536139362
1076738937 6455606060 5921658946 6759551900 4005559089 ・・・・・・
その他
また類似の安定した比として白銀比がある。
関連項目
参考文献
- ハンス・ヴァルサー『黄金分割』日本評論社 ISBN 4535783470
- R.A.ダンラップ『黄金比とフィボナッチ数』日本評論社 ISBN 4535783705
- 中村 滋『フィボナッチ数の小宇宙(ミクロコスモス)―フィボナッチ数、リュカ数、黄金分割』日本評論社 ISBN 4535782814
- 佐藤 修一『自然にひそむ数学―自然と数学の不思議な関係』講談社ブルーバックス ISBN 406257201X
- アルプレヒト・ボイテルスパッヒャー、ベルンハルト・ペトリ『黄金分割―自然と数理と芸術と』共立出版 ISBN 4320017811
- 高木 貞治『数学小景』岩波現代文庫 ISBN 4006000812
- 『ユークリッド原論(縮刷版)』共立出版 ISBN 4320015134
- マリオ・リヴィオ『黄金比はすべてを美しくするか?』共立出版 ISBN 4152086912