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'''発光ダイオード'''(はっこうダイオード、{{lang-en-short|light emitting diode}}、'''LED''')は、[[順方向]]に[[電圧]]を加えた際に[[発光]]する[[半導体素子]]のことである。
 
'''発光ダイオード'''(はっこうダイオード、{{lang-en-short|light emitting diode}}、'''LED''')は、[[順方向]]に[[電圧]]を加えた際に[[発光]]する[[半導体素子]]のことである。
  

2020年1月8日 (水) 04:08時点における版

[[ファイル:発光ダイオード.jpg|360px|thumb|発光ダイオード]] '''発光ダイオード'''(はっこうダイオード、{{lang-en-short|light emitting diode}}、'''LED''')は、[[順方向]]に[[電圧]]を加えた際に[[発光]]する[[半導体素子]]のことである。 [[1962年]]、[[ニック・ホロニアック]]により発明された<ref>[http://www.ge.com/jp/news/reports/edisons_shoulders_aug15_12.html エジソンに続く物語:GEのエンジニア、ニック・ホロニアックのLED発明から50年]({{lang|en|GE imagination at work}} / 原文(英語):2012年8月15日公開)</ref>。発明当時は赤色のみだった。黄色は[[1972年]]にジョージ・クラフォードによって発明された。 発光原理は[[エレクトロルミネセンス]] (EL) 効果を利用している。また、[[有機エレクトロルミネッセンス]](OLEDs<ref>{{lang-en-short|organic light-emitting diodes}}</ref>、有機EL)も分類上、LEDに含まれる。 == 原理 == 発光ダイオードは、[[半導体]]を用いた[[pn接合]]と呼ばれる構造で作られている。発光はこの中で[[電子]]の持つ[[エネルギー]]を直接、光エネルギーに変換することで行われ、巨視的には[[熱]]や[[運動 (物理学)|運動]]の介在を必要としない。[[電極]]から半導体に注入された電子と[[正孔]]は異なった[[エネルギー帯]]([[伝導帯]]と[[価電子帯]])を流れ、pn接合部付近にて[[禁制帯]]を越えて[[再結合]]する。再結合時に、[[バンドギャップ]](禁制帯幅)にほぼ相当するエネルギーが[[光]]として放出される。放出される光の[[波長]]は材料のバンドギャップによって決められ、これにより[[赤外線]]領域から[[可視光線]]領域、[[紫外線]]領域まで様々な発光を得られるが、基本的に単一色で自由度は低い。ただし、青色、赤色、緑色([[光の三原色]])の発光ダイオードを用いることであらゆる色([[フルカラー]])を表現可能である。また、青色または紫外線を発する発光ダイオードの表面に[[蛍光塗料]]を塗布することで、白色や[[電球]]色などといった様々な[[中間色]]の発光ダイオードも製造されている。 == 特性 == === 電気的特性 === 他の一般的な[[ダイオード]]と同様に極性を持っており、[[カソード]](陰極)に対し[[アノード]](陽極)に正電圧を加えて使用する。電圧が低い間は電圧を上げても[[電流]]が増えず、発光もしない。ある電圧を超えると電圧上昇に対する電流の増え方が急になり、電流量に応じて光を発するようになる。この電圧を「順方向降下電圧 (V<sub>F</sub>)」というが、一般的な[[シリコン]]ダイオードと比較すると、発光ダイオードは順方向降下電圧が高い。発光色によって違うが、赤外では1.4V程度。赤色・橙色・黄色・緑色では2.1V程度。白色・青色では3.5V程度。<!-- 見た目は1本のダイオードでも内部的に2本直列になっているという製品では?高出力品(所謂ワット級LED)では5V前後。-->紫外線LEDは最もV<sub>F</sub>が高く、4.5から6Vが必要である。 発光時の消費電流は表示灯用途では数mAから50mA程度だが、照明用途のものでは消費電力が数十Wに及ぶ大電力の発光ダイオードも市販されており<ref>[http://www.luminus.com/products/CSM-360.html White LEDs CSM-360] - Luminus Devices, Inc.</ref>、最大駆動電流が10Aに迫る製品も存在する<ref>[http://www.luminus.com/products/SST-90.html White LEDs SST-90] - Luminus Devices, Inc.</ref>。 逆方向に電圧を掛けた場合の[[耐電圧]]は、通常のシリコンダイオードより遙かに低く、通常はマイナス5V程度である。これを超えると破壊されるため、[[整流]]用途には使用できない。 === 光の特性 === [[蛍光灯]]や[[白熱灯]]など他の多くの光源と異なり、不要な紫外線や赤外線を含まない光が簡単に得られる。このため、紫外線に敏感な[[文化財]]や[[芸術]]作品や、熱照射を嫌う物の照明に用いられる。入力電流変化に対する光出力の応答が早く通信などにも利用されるほか、照明に用いた場合は点灯と同時に最大光量が得られる。 なお、紫外線領域に近い紫色LEDでは、紫外線を含む場合がある。 === 物理的特性 === * 構造が簡単なため[[大量生産]]が可能。 * 価格は赤色LEDで1個5[[円 (通貨)|円]] - 10円程度と安価。 * 電球と違い[[フィラメント]]を使わないため軽量で衝撃に強く長寿命であり、[[故障]]の発生する頻度も低い。 == 駆動方式 == 基本的に光量が電流に比例することから、[[定電流回路]]や平均電流を一定になるように制御した[[高周波回路]]で駆動する。 交流電源は[[ダイオードブリッジ]]などで整流して利用される。 === 電流制限抵抗 === [[定電圧電源]]に接続して使用する場合は、[[抵抗器]]を[[直列回路|直列]]に接続する事で電流をほぼ一定にできる。 電源電圧を E として電流 I を流すには、適切な抵抗値はおよそ (E-V<sub>F</sub>) /I となるが、LEDの順方向降下電圧 (V<sub>F</sub>) には個体差があり、抵抗にかかる電圧が変わるため、実際に製造された製品に流れる電流は設計時に想定した値に比べて多少のバラツキが生じる。 抵抗も電力を消費するため電力効率は良くないが、定電圧電源を用意できる場合には最も単純かつ低コストな回路となる。そのため、発光効率を特に追及しない表示灯用途には多用される。 === 定電流駆動 === [[定電流ダイオード]] (CRD) を[[直列回路|直列]]に接続する等、[[能動素子]]で定電流回路を構成する事により[[自動車]]や[[バイク]]の[[バッテリー]]等、電源電圧がある程度変動する環境下でも対応できる。 電源には、LEDの順方向電圧降下に加え、定電流回路の動作に必要な電圧が必要となる。CRDは動作に5から10V程度の電圧を必要とするが、1V程度の電圧でCRDと同等の動作ができる[[IC]]も利用されている。 回路は単純だが、電流制限抵抗と同様、過大な電源電圧を電力を消費して吸収するため、電源電圧によっては電力効率が悪くなる。 === 高周波駆動 === 人間の視覚が認識できない短い時間周期の点滅を繰り返し、見かけ上一定の明るさを得る。明るさは点灯時間の[[デューティー比]]を変える[[パルス幅変調]]により容易に調節できる。 駆動回路には電力効率は良いが出力に電流・電圧に変動([[リップル]])がある[[スイッチング電源]]や[[昇圧回路]]を用いることが可能である。また、出力電流の平均を一定に保つことで、[[乾電池]]のように電源電圧が低かったり、変動幅が大きかったり、という場合にも一定の明るさを維持可能である。 駆動回路で消費される電力が他の駆動方式に比べ少なく、入力電力の大半がLEDで消費されるため、電力効率は比較的良い。しかし、電流断続時の急激な電流変化により生じる[[ノイズ]]放射が機器内外へ[[電磁両立性|電磁妨害を及ぼす]]ほか、回路規模増大に伴って[[コスト]]と[[実装]]体積が増加する。 == 使用に必要な知識 == * 発する光の強さは電流の量におおよそ比例する。しかし特に大電流域では効率が低下する。 * 熱に弱く、80℃以上で素子の劣化が始まるため寿命が縮む<!-- 参考文献:http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0803/05/news062.html -->。 * 発熱が少ないとはいえ、高出力品では相応に発熱する。熱に弱いので、放熱の必要性は白熱球や蛍光灯よりむしろ高い。[[ヒートシンク]]などで適切に放熱しないと効率の低下や寿命の短縮で発光ダイオードの利点が失われる他、発煙・[[発火]]などの事故に繋がる事がある。 *連続最大電流、瞬間最大電流を超えないこと。[[定格]]電流より大きい電流を流すと高[[光束]]が得られるが、寿命が極端に短くなる。LEDを使用した市販品では、寿命を犠牲にして高輝度を得ている物や価格を抑えるために電流を制限する回路を省いている物もある。 * [[極性]]があることから、[[アノード]]と[[カソード]]を間違えて印加した場合発光しない。また逆方向に対する耐電圧が低く、破壊されやすい。 * [[並列]]接続してはいけない<ref>日亜化学工業 LEDテクニカルデータ {{PDFlink|『[http://www.nichia.co.jp/specification/products/led/ApplicationNote_STS-KSE3694.pdf GaN系LEDの並列接続回路について]』}}</ref>。順方向降下電圧 (V<sub>F</sub>) には個体差があり、並列に繋ぐと最も順方向降下電圧(簡単に言えば、電流が流れ始める電圧)の低い素子のみに電流が集中する。電流の集中でさらに発熱し[[電気抵抗]]とV<sub>F</sub>の値が減少し、さらに電流の集中が促進されるという悪循環が起こる。発光量が不均一になるだけでなく、電流が最大定格を超えれば過熱による寿命短縮や焼損の危険もある。素子の破壊がオープンモードだった場合は、次にV<sub>F</sub>の低い素子に更に大量の電流が集中し、連鎖的に破壊が進行する。複数のLEDを同時に点灯する場合は、可能な限り[[直列]]に繋いだ上で抵抗や能動素子で定電流制御した回路を1単位とし、この単位回路を並列に電源に繋ぐ。ただし、複数の素子が内部で並列接続されている製品もある<ref>[http://www.acriche.com/jp/product/prd/zpowerLEDp7.asp Z-Power LED P7 Series] - Seoul Semiconductor Co., Ltd.</ref>。 * GaN系などの発光ダイオードは[[静電気]]や[[サージ電流]]に弱い。 * [[レンズ]]付きの発光ダイオードの場合、素子の[[光軸]]と実際に放出される光の方向は、製造過程でのばらつきのため通常一致せずわずかにずれている。 * 他の発光器具にも言えることではあるが直視すると、[[目]]に悪影響を与える事がある。特に紫外線や高出力のものはその傾向が強い。 == 材料 == 放出された光の[[波長]]([[色]])は、[[pn接合]]を形成する素材の[[バンドギャップ]]の大きさが関係する。発光ダイオードでは近赤外線や可視光、紫外線に至る波長に対応したバンドギャップを持つ半導体材料が用いられる。一般に発光ダイオードには発光再結合確率の高い[[直接遷移]]型の半導体が適する一方、一般的な半導体材料である[[ケイ素]](シリコン)や[[ゲルマニウム]]など[[間接遷移]]型半導体では、電子と正孔が再結合するときに光は放出されにくい。しかし、黄色や黄緑色に長く使われてきたGaAsP系やGaP系などドープした不純物の準位を介して強い発光を示す材料もあり、広く用いられている。 以下の素材を使用することにより、さまざまな色の発光ダイオードを作り出すことができる。 * [[アルミニウムガリウムヒ素]] (AlGaAs) - 赤外線・赤 * ガリウムヒ素リン (GaAsP) - 赤・橙・黄 * インジウム窒化ガリウム (InGaN) /[[窒化ガリウム]] (GaN) /アルミニウム窒化ガリウム (AlGaN) - (橙・黄・)緑・青・紫・紫外線 * リン化ガリウム (GaP) - 赤・黄・緑 * [[セレン化亜鉛]] (ZnSe) - 緑・青 * アルミニウムインジウムガリウムリン (AlGaInP) - 橙・黄橙・黄・緑 * [[ダイヤモンド]] (C) - 紫外線 * [[酸化亜鉛]] (ZnO) - 青・紫・近紫外線(開発中) 以下は基板として利用されている。 * [[炭化珪素]]基板 (SiC) - 青 * [[サファイア]]基板 (Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>) - 青 * ケイ素基板 (Si) - 青(研究段階) == 青色発光ダイオード == 青色発光ダイオードは主に[[窒化ガリウム]] (GaN) を材料とする、[[青色]]の光を発する発光ダイオードである。'''青色LED'''とも書かれる。日本の化学会社、[[日亜化学工業]]株式会社が大きなシェアを占めている。他の有力メーカーとしては、[[豊田合成]]、[[星和電機]]などがある。GaN系化合物を用いた発光ダイオードの開発とそれに続く青色[[半導体レーザー]]の実現により、紫外から純緑色の可視光短波長領域の半導体発光素子が広く実用化されるに至った。 === 歴史 === 発光ダイオードは低電力で駆動することができる[[光源]]のため、[[ディスプレイ (コンピュータ)|ディスプレイ]]への応用が期待されていた。[[RGB]]による[[フルカラー]]表示のためには[[光の三原色]](赤・緑・青)の発光素子が必要であるが、このうち[[1980年代]]中頃までに純赤色は実用化されていたが、青色の場合は「青色ダイオード」の名で販売されているものがありこそすれ紫がかっており、純青としての実用的な高い[[輝度 (光学)|輝度]]を出す製品が皆無だった。また黄緑色は早くから実用化されていたが、純緑色は青色と同じくGaN系半導体材料が用いられるため、'''純緑色LEDの実用化は青色LEDの登場以降'''である。これらのことから、発光ダイオードによるフルカラーディスプレイの実現は困難だった。 純青色発光の実現のため[[セレン化亜鉛]] (ZnSe) 系化合物や[[炭化ケイ素]] (SiC) を用いての研究が古くから行われ、ZnSe系による青緑 - 緑色発光ダイオードの開発に至った他、SiCの青色発光ダイオードは弱い発光強度ながら市販もされた。しかしその後、GaN系化合物による青色発光ダイオードが急速に普及したため、現在ではこれらの材料系の技術は白色発光素子や基板などの用途に転用されている。 窒化ガリウムを用いた高輝度の青色LED開発に関して、基礎技術の大部分(単結晶窒化ガリウム (GaN) やp型結晶、n型結晶の作製技術やpn接合のGaN LED)は[[赤崎勇]]、[[天野浩]]らにより実現されている。また発光層に用いられているInGaNは[[NTT]]の[[松岡隆志]](現・[[東北大学]]教授)らによって実現されている。それらの技術を使って製品化したのが日亜化学工業である<ref>[http://www.nichia.co.jp/jp/about_nichia/2002/2002_091701.html 豊田合成社との和解の件] - 日亜化学工業</ref>。 [[2001年]]8月、[[中村修二]]が職務上で[[1993年]]11月に発明した([[職務発明]])「[[404特許]]」を巡って元勤務先の日亜化学工業を提訴し、同特許の原告への帰属権確認ないし譲渡対価を巡って係争した('''青色LED訴訟''')。この訴訟は[[企業]]と職務発明者との関係について社会の関心を広く喚起し、裁判所は一審では発明の対価を約604億円と評価し200億円の支払いを命じたが、東京高裁は和解へと誘導し1審判決が認定した発明の対価約604億円の1/100 相当の6億円を「対価」として提示。日亜は、(いずれにせよ対価の支払いが遅れていたので)[[遅延損害金]]を含む約8億4千万円を支払うことで[[和解]]が成立した。しかし中村修二はなお納得できず、「高裁は山ほど提出した書面をまるで読まず、最初から和解金額を決めていた。高裁の和解案の決め方は正義とは言えない」と指摘するために、滞在していたアメリカより日本に訪れるという出来事もあった<ref>“[http://www.47news.jp/CN/200501/CN2005011201004267.html 「腐った司法に怒り心頭」 中村教授、帰国し批判会見]”. 共同通信 (2005年1月12日). 2012年1月2日閲覧。</ref>。 [[2004年]]12月、東北大学[[金属材料研究所]]の[[川崎雅司]](薄膜電子材料化学)らの研究チームはより安価な[[酸化亜鉛]]を用いた青色発光ダイオードの開発に成功した。青色LEDの再発明ともいわれている。この成果は同年[[12月19日]]付の英科学誌[[ネイチャー|ネイチャーマテリアルズ]](電子版)にて発表している。高コストの窒化ガリウムに取って代わる可能性もある。 赤崎、天野、中村の三名は青色発光ダイオードに関する業績が評価され、[[2014年]]の[[ノーベル物理学賞#2010年代|ノーベル物理学賞]]を受賞した。 == 白色発光ダイオード == '''白色LED'''とも書かれる。白色光とは、一般には可視光線の全[[スペクトル]]域に渡り強度が連続している光(連続スペクトルの光)を指す用語である。発光ダイオードで得られる発光は、レーザーほどではないものの狭い波長範囲のみに限られるため、この意味での白色光を生成することはできない。しかし、白色のような多色光に対しては、スペクトルが異なっていても同一の色と人間の眼に認知させるようにスペクトルを設計することが可能である。典型的には、テレビのように[[光の三原色]]を混合したり、[[補色]]関係にある2色を混合して、適切な強度比に設計すれば白色に認知される光が生成できる。白色発光ダイオードではこの原理が利用され、具体的な手法がいくつか考案されている。この結果、低電圧でのDC駆動などダイオードの持つ電気的な扱いやすさのみならず、光源としても高効率(低消費電力)であり、しかも寿命も既存の光源以上に長いことから、[[LED照明]]として白色発光ダイオードが利用されるなど、気体を使わない固体光源として普及が進んでいる。 === 蛍光体方式 === 青またはそれよりも波長の短い光を放つ発光ダイオードのチップに、その発光ダイオードの光により励起されて長波長の光を放つ[[蛍光体]]を組み合わせた方式。発光ダイオードのチップは蛍光体で覆われており、点灯させると、発光ダイオードチップからの光の一部または全部が蛍光体に吸収され、[[蛍光]]はそれよりも長波長の光を放つ。発光ダイオードのチップが青発光であれば、チップからの青色の光に蛍光体の光が混合されてともに出力される。蛍光波長や蛍光体の厚さなどを調整すれば白色光を得ることができる。この蛍光体には、例えば[[イットリウム・アルミニウム・ガーネット|YAG]]系のものが用いられる。この方式には、単一のチップとパッケージだけで白色発光が実現可能だという利点がある。 白色に認識される光を放つような白色発光ダイオードの実現には、青色発光ダイオードの存在が不可欠であった。蛍光体による発光では、蛍光体が受けた光より短い波長の光は得られないため、赤や緑のLEDでは短波長の成分が不足し白色に認識されないからである。そして蛍光体方式の開発により、固体光源である白色発光ダイオードが本格的に普及することとなった。 ==== 擬似白色発光ダイオード ==== 現在の<!-- 擬似白色発光ダイオードの主流が擬似白色発光ダイオードであるのは当たり前 --><!-- 擬似 -->白色発光ダイオードの主流であり、一般に青黄色系[[発光効率#擬似白色|擬似白色]]発光ダイオードと呼ばれている。視感度の高い波長である黄色に蛍光する蛍光体と青色発光ダイオードとを組み合わせることによって、視覚上で大変に明るい白色発光ダイオードを実現している。青色発光ダイオードの製造を行っている日亜化学は元々蛍光体の製造メーカーであるためこの方式を得意としている。豊田合成も同方式を用いている。この方式により作成された白色発光ダイオードが、世界初の白色発光ダイオードとされている。擬似白色発光ダイオードの実現は、世界的にインパクトを与えた青色発光ダイオードの発表の後だったため報道は控えめだったが、業界内では大きなニュースとなった。 擬似白色発光ダイオードは非常に高い[[ランプ効率]] (lm/W) 値が得られることが特徴である。その理由には[[視感度]]が関連しており、視感度の高い波長にスペクトルを集中させた蛍光体の黄色と発光ダイオードの青色とを組み合わせることによって実現されている。一般に、人間の[[網膜]]にて光の強度や色を識別する細胞組織である[[視覚#視感度と錐体分光感度|錐体]]は黄緑色の波長(約555nm付近)に高い分光感度を持つ(視感度が高い)。このため、この黄緑色の波長のスペクトルに蛍光体の発光を集中させるとエネルギーの割に人は明るく感じ、視覚上大変に明るい白色発光ダイオードが実現できる。100lm/Wを超えるような白色発光ダイオードでは、ランプ効率が高い擬似白色発光ダイオードを実現するために、[[光束|全光束]]に対するエネルギー効率が高くなるように視感度を考慮した最適化がなされている。なお、物理的なエネルギー効率は、物理エネルギー量を示す[[放射束]]を投入電力(ワット)で除算して計算されるため、光として取り出すことのできる光(光子数)を増すことにより高めることができるが、それのみでは視感度に対して効率の高くない波長域の光が多い場合もある。ランプ効率を高めるには、物理的に効率が良く、かつ、視感度に適したスペクトルが得られる必要がある。 その引き替えに、特にランプ効率を優先した設計の擬似白色発光ダイオードでは[[演色性]]が低下しやすい。一般には擬似白色発光ダイオードの平均演色評価数 (Ra) は76程度となり、[[蛍光灯|一般型蛍光灯]] (Ra67) と三波長型蛍光灯(同85)の中間に当たる<!-->リンク切れのためコメントアウト <ref>財団法人光産業技術振興協会{{PDFlink|『[http://www.oitda.or.jp/main/technology/technology0609.pdf 光技術動向調査報告書]』}}</ref>。ただし現行の演色性の評価法は白熱灯や蛍光灯を前提としたもののため、発光ダイオードのように急峻なスペクトルを持つ光源の場合に、演色性が見た目の印象より低く評価される傾向がある。このため、前述のような特性をもつ光源について平均演色評価数がもっと高くなるように評価法を見直す議論もある<ref>財団法人日本色彩研究所『[http://www.jcri.jp/hiroba/buhou/146-3.htm 照明用光源(LEDを含む)の演色性評価方法に関する調査研究]』</ref>。 ==== 高演色白色発光ダイオード ==== 青色発光ダイオードと黄色[[蛍光体]]を組合わせた構成での白色光は、緑や赤のスペクトル成分が少ないため演色性が低い。赤色や深紅色の発色が悪いという性質を改善するために黄色以外の蛍光体を混ぜて演色性を改善しようとすると、ランプ効率 (lm/W) が低くなる。これは、白色発光ダイオード開発初期には青色で励起して緑や赤を発する適切な蛍光体が無く蛍光灯用の紫外線で励起される蛍光体が主体だったことと、赤色系の蛍光体を多く配合して赤色領域で多くの光エネルギーを発生させてもこの領域の人間の目の[[視感度]]が低いことから[[ランプ効率]]上の評価が低くなってしまうという理由による(上述)。また、透過して出力される青色光の割合を正確に揃えることが難しく、製造時の色温度の個体差が大きい欠点もある。 これらの点について、近年は、蛍光体と発光波長の点で進展が見られる。蛍光体については、[[独立行政法人]][[物質・材料研究機構]]がβサイアロン蛍光体の開発に成功し、これを用いることで大幅なランプ効率の向上が得られるとともに赤色や深紅色の発色の問題も解決されつつある。発光波長の点では、紫 - [[紫外線]]を発光する発光ダイオードが開発されている(ただし、紫色発光ダイオードは紫外領域に近いため暗く見える比視感度の問題がある)。これにより、蛍光灯同様に紫光または紫外光の励起により多色を発光させ、演色性を向上させた白色発光ダイオードも登場している<ref>“[http://www.toyoda-gosei.co.jp/news/03/03_1007.html 豊田合成/ニュース/プレスリリース「高演色性 ハイパワー白色LEDランプの開発・販売」]”. 豊田合成株式会社 (2003年10月7日). 2012年1月1日閲覧。</ref>。 === 3色LED方式による白色発光 === その他の白色発光の実現方法として、光の三原色である赤色・緑色・青色の発光ダイオードのチップを用いて1つの発光源として白色を得る方法もある<ref>[http://www.nichia.co.jp/jp/product/led-lamp-full.html 製品例]</ref>。この方式は各LEDの光量を調節することで任意の色彩を得られるため、大型映像表示装置やカラー電光掲示板の発光素子として使用されている。ただし、照明用には適さないとされる。照明として用いることを考えた場合、蛍光体方式はある程度幅のあるスペクトルなのに対して3色LED方式は赤・緑・青の鋭い三つのピークがあるのみで黄および[[シアン (色)|シアン]]のスペクトルが大きく欠落している。3色LED方式の白色発光は光自体は白く見えても自然光(太陽光)の白色光とはほど遠いため、それで照らされた物の色合いは太陽光の場合と異なってくる。照らされた物の色合いが違って見える理由を説明する。{{see also|演色性}}可視光線のうち、 # 赤色と緑色の光を反射し他を吸収する物体 # 黄色の光のみを反射し他を吸収する物体 があったとする。太陽や白熱電球の光はあらゆる波長の可視光線を含むのでその下では、1は赤色と緑色の光が反射され網膜の赤錐体と緑錐体を刺激して黄色に見える。2は黄色の光が反射され、その光が網膜の赤錐体と緑錐体の両方を刺激して黄色に見える。つまり両者とも黄色に見える。ところが光の三原色の混合で照らした場合、1は赤と緑の光が反射され黄色に見えるが2は赤・緑・青いずれも物体に吸収されてしまい、理論上は黒く見えることになる。実際には完全に黄色の光のみを反射して他の光を一切反射しないという物体はないので黄色いはずのものが黒く見えるほどの極端なことにはならないが、多少色合いが異なって見える。[[蛍光灯]]ではこの問題を解決するために5色発光や7色発光のものがあるが、それでも演色性は白熱灯に一歩譲る。 この方式は3つのチップが必要で、見る角度に依存しない均一な発光色を得ることは難しい。さらにそれぞれのチップの要求する電圧が異なるので点灯回路も3系統必要である。しかし蛍光体が発光ダイオードのチップからの発熱で劣化する問題を回避できるメリットがある。また液晶バックライトなど表示用に用いる場合は赤・緑・青の3つの成分しか持たないことが逆に利点になり、色純度の高い鮮やかな表示色を得ることができる。 == 製造 == 発光ダイオードの基本はPN接合であるが、実際には発光効率を上げるために[[ダブルヘテロ接合]]構造や[[量子井戸接合]]構造などが用いられ、技術的には[[半導体レーザ]]との共通点が非常に多い。製造法としては、基板の上に[[化学気相成長法]]によって、[[薄膜]]を積み重ねていく方式などが用いられる。 === 製品の外観 === 最も単純なものは、発光部を内包する透明樹脂部分と2本の端子からなる。多色のLEDを内蔵したものは、3本以上の端子を持つ。 * 砲弾型 * チップ型 * 多セグメント形 ** [[7セグメントディスプレイ|7セグメント]]形 ** [[7セグメントディスプレイ#14セグメント|14セグメント]]形 ** [[ドットマトリクス|マトリックス]]形 *** 反射型 == ガリウムの資源問題 == [[インジウム]]と比較して[[ガリウム]]の資源は逼迫していない。しかしその産地が主に[[中華人民共和国|中国]]、[[カザフスタン]]、[[ウクライナ]]に偏在し、これら各国の[[カントリーリスク]]から半導体材料をガリウムに依存し過ぎることに懸念が広がっている。このため酸化亜鉛やシリコン、[[炭化ケイ素]]といった材料による実用的な青色発光ダイオードの実現が急務となっている。 == 応用 == 低消費[[電力]]、長寿命、小型であるため数多くの電子機器に利用されている。特に、[[携帯電話]]のボタン照明などその特性をフルに活かして採用されているといえる。また、1つの素子で複数の色を出せるような構造のものもある。機器の動作モードによって色を変えることができるなど、機器の小型化に貢献している。 当初は輝度が小さかったため電子機器の動作表示灯などの屋内用途に限られていたが、赤色や黄緑色の高輝度タイプのものが実用化されてからは屋外でも[[電球]]式に変わり[[電光掲示板]]に採用され、さらには駅の[[発車標]]などにも使用されるようになった。 高輝度の青色や緑色、それを応用した白色の発光ダイオードが出回るようになってからは[[競技場]]のビジョンなどの[[フルカラー]]の大型[[ディスプレイ (コンピュータ)|ディスプレイ]]、電球の代わりとして[[懐中電灯]]や[[信号機]]、自動車の[[方向指示器|ウィンカー]]や[[尾灯|ブレーキランプ]]、各種の照明にも利用されている。特にブレーキランプに使用した場合、電球よりブレーキペダルを踏んでから点灯するまでのタイムラグが短いため安全性が向上する。[[2006年]]には日本初となる超高輝度LEDを用いた[[前照灯]]が、[[JR東海313系電車]]で採用された。[[2012年]]5月開業の[[東京スカイツリー]]では、夜のライトアップ照明を全てLEDで行っている。 なお、発光ダイオード自体の寿命は長いが使用目的によっては樹脂の劣化による光束低下の進行が早くなることもあり、LED交換が必要となる程度まで光束が落ちた場合に[[基板]]の交換も含む大規模な[[メンテナンス]]が必要とされるのが今後の課題となる。鉄道車両では、駅での行き先表示としての役目を果たせば良いという考えから、走行中には側面表示が一定の速度に達すると消灯するなど、きめ細かい制御で表示装置の長寿命化を図っているものも存在する。なお、編成前後の前面表示は表示のままであることが多い。ちなみに側面表示は、[[ドットマトリックス]]の制御方法から、高速移動中は表示し続けていたとしても表示文字の視認が難しい。 [[色覚異常]]によって発光ダイオードの色の見分けが困難となる場合がある。例えば1型2型の色弱の人には赤・橙・黄色・黄緑・緑のLEDは同じ色に見えてしまう。交通[[信号機]]では緑を青緑色とすることで色覚異常でも判別できるようにしているが、交通信号機以外でも色覚障害者向けの対策が必要とされる。 === 光通信 === 現代の高速通信とコンピュータを支えているのは、LEDである。[[サーバ]]内通信から家庭への通信までLEDを使った光ケーブルで行われている。また国内拠点間や海外とつなぐ[[バックボーン]](基幹)回線もほとんど光ファイバー(LED使用)によるケーブルが使われている。周波数の高い青色発光ダイオードを使うことにより、簡単に通信容量を約2倍にすることができる。 === 信号機 === 近年は、鉄道用および[[道路]]交通用[[信号機]]での利用も拡大している。[[省エネルギー]]で耐久性が高く、また従来[[白熱電球]]にカラーレンズを組み合わせて色を表現していた従来のものと違って、反射を最小限に抑える[[クリアレンズ]]を採用しているため太陽の反射光であたかも点灯しているかのような錯覚を見手に感じさせる[[疑似点灯現象]]の防止がなされ[[太陽光]]などの影響を受けにくいとされている。しかしながら反面、従来の[[白熱電球]]式の信号機と違い、交流電源もしくは直流でも[[整流器|半波整流]]で駆動した場合、発光原理が白熱電球と違い熱慣性がないため[[電源周波数]]に合わせて点滅してしまう。そのため[[タクシー]]などに[[交通事故]]の証拠[[撮影]]用として搭載されている[[ドライブレコーダー]]の[[録画]]周期とLEDの消灯している周期が[[同期]]してしまうと信号表示の状態が写らず、全部消灯しているように写るなどの問題が発生している。これを防ぐために国内向けの製品ではドライブレコーダーの周波数を、信号機の電源の60もしくは50Hzととずらす必要がある。また、色によっては色覚異常(色弱・色盲)の人達には見えにくい事があるため、様々な対策・研究が行われている。 [[積雪]]のある地方では、LED信号機の点灯面に[[雪]]が付着して信号が見えなくなる問題が発生している。従来は白熱電球の発熱によって融けていた[[着雪]]が、発熱の少ないLEDでは融けずに溜まってしまうためである。着雪の対策として、点灯面が凹凸の無い平面で下向きに傾けてある「フラット型」や、点灯面に[[アクリル樹脂]]製フードをかぶせた「フード型」などの着雪防止型LED信号機が開発されている。 === 電光掲示板・大型映像装置 === ==== 交通関連 ==== 駅の[[発車標|発車案内表示板]]や[[空港]]の発車案内板などには従来の[[反転フラップ式案内表示機|反転フラップ式]]や字幕式に代わり、[[鉄道車両]]や[[バス (車両)|バス]]の[[行先票|行先表示]]などには従来の[[方向幕|幕式]]に代わり普及が進んだ。現在でもLED方向幕と呼ばれることがある。 最初に登場したLED表示機は赤色・黄緑色・橙色の3色(橙色は赤色と黄緑色LEDによる)表示方式だった。赤色LEDと黄緑色LEDにより3色目の橙色が表現されているもので、俗に「3色LED方式」とも呼ばれる。ただし、実際は2色のLEDを用いているため、工業製品などでは「2色LED」(2C-LED) とも呼称される<ref>[http://geocities.yahoo.co.jp/gl/number_of_formation/view/20100626/1277483313 混在する“3色LED”]</ref>。また、白色LEDでの赤色、青色、緑色の3色のLEDを用いた「3色LED方式」とは異なる。 その後、白色LEDを搭載したものや、単色で赤・青・緑、二色混色で[[黄色#光源色としての黄色|黄]]・[[シアン (色)|シアン]]・[[マゼンタ]]、三色混色での白の計7色を表示するマルチカラーLEDとされるもの、さらに高輝度の赤色・青色・緑色LEDによりあらゆる色を表示可能にした[[フルカラー]]LEDのものも登場した。フルカラーLEDは、近年主流となりつつある。ただし、バスの行先表示機では、交通信号機等との兼ね合いもありフルカラー式が認可されておらず、またバスは鉄道ほど種別も多くなく、あまり多くの色を必要としないため、赤色・黄緑色・橙色の「3色LED方式」が主流である。 ==== 大型ビジョン ==== 従来、大型ビジョンの発光素子には[[ブラウン管|CRT]]や[[蛍光表示管|VFD]]の[[光の三原色]]素子が利用されていたが、青色LEDの進歩によりこれらに変わってLEDが使用されるようになった。他方式に比べコストや輝度が優れており普及が進んでいる。 ==== 看板など ==== 店頭看板などでも、従来のFL蛍光管等に代わりLEDモジュールなどのLED製品の普及が進んでいる。看板・サインのサイズの大小化や軽量化とともに故障が少なくコストに優れている。 === ディスプレイのバックライト === 冷陰極管が発する白色光を[[カラーフィルタ]]で透過して得られる色([[赤]]・[[緑]]・[[青]])に比べ、RGB3色発光ダイオードが放つ光は色純度が高い。そのため、[[液晶ディスプレイ]]の[[バックライト]]の光源を[[冷陰極管]]から発光ダイオードに置き換えることによって色の再現範囲を大きく広げることができる。ただし最近ではコストが安くて効率の高い擬似白色LEDが用いられることが多く、この場合は色の再現範囲は冷陰極管と変わらず、広色域タイプの冷陰極管と比べると劣る。また、LEDは[[点光源]]のため広い面積を照射しようとするとムラを生じやすく、バックライト用としては携帯機器用の小型ディスプレイに用いられることが主だったが、次第に12インチサイズ前後のノート型[[パソコン]]まで採用されるところまで来ている。 大型ディスプレイ用のLEDバックライトとしては、[[2004年]]11月に[[ソニー]]より液晶[[テレビ受像機|テレビ]]「[[QUALIA]]」で実用化された。より一般的に普及が進んだのは2008年からで、各メーカーが上位機種を中心に採用するようになった。'''LEDテレビ'''とは一般的に、LEDバックライトを搭載した液晶テレビのことである。2011年現在は、低価格化が進み、下位機種でも採用されることがある。エリア駆動対応機種では、映像が暗い部分のみLEDバックライトを消灯するエリア駆動により、液晶ディスプレイの弱点であるコントラストを大幅に拡大できるメリットがある。また超薄型と呼ばれる厚さを抑えた液晶テレビや、[[ノートパソコン]]の薄型化でもLEDバックライトが重要な要素となっている。また、LEDバックライトを搭載したエッジ型のディスプレイは、LEDの特性上、CCFL(蛍光管)テレビに比べて消費電力が少ない。 なお、上述の「LEDテレビ」やLEDバックライトを搭載した液晶ディスプレイ全般を指す場合に使われる「LEDディスプレイ」という呼称は、正確には'''誤用'''である。液晶テレビのバックライトは発光するための物であり、映像を表示するものではない<ref>[http://www.sharp.co.jp/products/lcd/tech/s2_3.html 液晶ディスプレイの構造と作り方]</ref>ためである。発光[[素子]]にLEDを採用した「LEDディスプレイ」については下記を参照。 === LEDディスプレイ === {{main2|有機発光ダイオードを採用したディスプレイ|有機エレクトロルミネッセンス}} 発光素子にLEDを採用したディスプレイ。前述の大型ビジョンや街頭広告などではよく見かける。一般家庭用途などのディスプレイには、現状ではあまり開発が進んでいない。 [[沖データ]]は2009年11月26日に、1.1インチQVGAの高輝度LEDディスプレイの開発に世界で初めて成功したと発表した<ref>“[http://www.okidata.co.jp/info/2009/news_091102.html 世界初、1.1インチQVGA高輝度LEDディスプレイの開発に成功|2009年|ニュースリリース情報|OKIデータ]”. 株式会社沖データ (2009年11月26日). 2012年1月1日閲覧。</ref>。 また、ソニーが、「[[Crystal LED Display]]」を開発中で、2012年の[[CES]]で55型フルHDディスプレイの試作機を参考出展している<ref>[http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201201/12-005/index.html 大画面・高画質に優れた次世代ディスプレイ“Crystal LED Display”を開発 ~2012 International CESに55型フルHD試作機を出展~]</ref>。 === 各種照明用 === 省エネ、高輝度で長寿命を実現できる白色LEDの開発に伴い発熱によるエネルギー消費の大きい[[電球]]に代わり新しい屋内・屋外照明材料として期待されている([[LED照明]])。デザインや光色なども調節できるため自由度の高い照明が可能になる。現在は既存の照明に置き換わる性能をもった製品が発売されており、懐中電灯、乗用車用ランプ、電球型照明、スポットライト、常夜灯、サイド照明、[[街路灯]]、[[道路照明灯]]などLEDを使用した製品が次々登場している。 E26型、E17型を中心とした白熱電球のソケットに装着可能な「LED電球」は企業間競争などにより大幅に価格が下落した。製品寿命や消費電力を考慮すれば「LED電球」の方が、白熱電球や電球形蛍光灯より低コストであると謳われているが、発売されてからまだ日が浅い商品であり、公称寿命として、各メーカーが謳う40000時間<ref>[http://ctlg.panasonic.jp/product/lineup.do?pg=03&scd=00006019 例 パナソニック社のLED電球]</ref>に達した例がほとんど無く、頻繁な点灯・消灯の繰り返しや連続点灯が、寿命に関わる劣化にどう影響を与えるかは未だ検証可能な個体が少なく、未知数である。 明るさや照射範囲などは「LED電球」の型番によって違いがある。より電球に近づけたと謳うものや、広配光を謳うもの、下方向のみのものなど多種多様である。中でも明るさについては、実際の明るさよりも明るいと不適切な表示(優良誤認)を行ったとして、メーカー12社<ref>{{PDFlink|[http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120614premiums_2.pdf 12社の概要]}}</ref>に対して、[[2012年]][[6月]]、[[消費者庁]]が[[景品表示法]]に基づく措置命令<ref>{{PDFlink|[http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120614premiums_1.pdf LED電球販売業者12社に対する景品表示法に基づく措置命令文]}}</ref>を行った。これにより、「LED電球」の明るさ基準を作る動きが生まれ、業界団体である一般社団法人日本電球工業会により、電球と置き換えた場合、電球の何ワット相当に該当するかを、全光束(ルーメン)が明るさ表示の基準として統一され出された<ref>{{PDFlink|[http://www.jelma.or.jp/07kankyou/pdf/02ZenkousokuLED.pdf 光量=全光束ルーメン対比表]}}</ref>。これにより、加盟会社の電球製品はそれぞれ電球何ワット相当と表示できる基準ルーメンと実際のルーメンに合わせる必要があり、不適切な表示はなくなった。ただし、非加盟会社の製品は、インターネットを通じて販売されることが多く、未だに不適切な表示を継続する例が後を絶たない。 直管蛍光灯(FL40W形等)と同形状・同口金 (T8:G13) の物も発売され、LEDチップ価格の下落に伴いややコストメリットが出つつある。しかし、急速に価格が下落し、電球との消費電力の差も大きい「LED電球」と違い、直管蛍光灯型LEDは、もともと低消費電力の蛍光灯との競争のため、消費電力の差が少なく、価格も高い。カバーに透明と乳白色の2種類があり、直下の照度を重視するなら透明、広い照射角(最大310度のものもある)を求めるなら乳白色のものを選ぶのが妥当である。照明機器としてLED素子1個では充分な光束が得られないため、使用目的に合わせてLED素子を複数個使用して照度を確保している。100個以上のLED素子を使用した製品も珍しくない。ただし、蛍光灯に比べ重量が増すためにソケットが重みに耐えられず落下する危険性があるほか、蛍光灯器具の安定器を取り除く必要があるタイプのものも多い。そのため、日本の大手メーカーなどは器具そのものをLEDユニットにしたものを開発している。 丸形蛍光灯型LEDを使用するシーリングライト等についても、直管蛍光灯と同じく、もともと低消費電力の蛍光灯との競争のため、消費電力の差が少なく、価格も高い。 [[表面実装]] (SMD) タイプのLEDを使用した照明器具を、「SMDライト」等と称して差別化して販売している例もあるが、本質的にLEDと何ら変わりがない。 ==== 乗用車のランプ ==== テールランプは、後続車両へのブレーキ作動の警告として使われる。そのため使用頻度が高く、急激な電力供給と発熱のため寿命が短いが、ランプ切れは事故につながりやすいため、長寿命のLEDが適している。また白熱型照明は発熱に時間がかかりそれがブレーキ作動から点灯までの時間差を生み事故の原因の一つになりうるが、LEDは時間差がきわめて少ない。 [[乗用車]]への利用も拡大しており、テールランプに加えアフターパーツとして室内灯やポジションランプ(スモールランプ)などが多く販売されている。光量が足りないためヘッドライトにLEDを採用例はなかったが、2007年5月発売の[[トヨタ自動車]]「[[レクサス・LS#4.E4.BB.A3.E7.9B.AE_.E3.80.8CLS460.2FLS600h.2FLS600hL.E3.80.8D.EF.BC.882006.E5.B9.B4-.EF.BC.89|LS600h]]」には[[小糸製作所]]が日亜化学工業と共同開発した(鉄道以外の用途として)世界初のLEDヘッドランプが搭載されている<ref>{{PDFlink|[http://www.koito.co.jp/pdf/news/07/20070327.pdf 世界初 LEDヘッドランプの開発、実用化 株式会社小糸製作所]}}</ref>。LS600hのLEDヘッドランプは1つのLEDランプでは光量は足りず3つのLEDランプをロービームとして使用していたが<ref>[http://allabout.co.jp/gm/gc/193094/2/ 次世代ヘッドライトはLEDに! All About]</ref>、その後LEDランプ1つあたりの光量が増え、2013年発売の3代目[[レクサス・IS#3代目 GSE3#/AVE30型(2013年 - )|レクサスIS]]では1つのLEDランプでロービームとして使用できるようになった。LEDヘッドランプは消費電力が少なく光量はHIDより上回っており<ref>[http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1305/24/news035.html#l_sp_130523jsae_koito_01.jpg 新型「レクサスIS」のLEDヘッドランプは第4世代、消費電力は第1世代の半分以下 ]</ref>、各自動車メーカーが採用しつつある。 ==== バイクなどのランプ ==== [[オートバイ]]への利用ではko-zaru仔猿(CKデザイン製)が、ウィンカーとテールランプ、ストップランプに平成15年(2003年)から採用している。小型バイクのためバッテリーの積載容量に制限があり、電力消費の点から採用した。日本では初めてのケースとなる。近年のLEDの性能向上を検証しつつ、ヘッドライトへのLEDの適用を研究している{{誰|date=2009年9月}}。 ==== 自転車のランプ ==== [[自転車]]<!--のライトへのLEDの普及率は自動車のそれとは比べ物にならない-->へのLEDの普及率は、自動車のそれに比べて非常に高い。発電機を動かすためペダルをこぐ力が乗り心地に直結するため、消費電力の少ないLEDの使用により軽快な乗り心地になる。また使用電力が低いため、非接触型の発電機を使用することにより、照明による負荷が非常に少なくなる。<!--安売りされているような-->[[廉価]]な[[軽快車]]などでは相変わらず電球が主流であるが、[[ハブ (機械)|ハブ]][[ダイナモ]]式の[[オートライト]]には多く採用されている。この他、前照灯としての役目より、他の自転車や自動車からの被視認性を意識した認識灯や尾灯への応用も多い。 ==== 舞台演出用の照明器具として ==== 高輝度LEDを搭載した舞台用照明器具がMARTIN社から発売されている。赤・青・緑(一部製品は白色)の高輝度LEDを搭載することにより一般的なフィラメントを用いた舞台照明と比較して次の利点が挙げられる。 * 消費電力が圧倒的に低い。 * 一つの照明につき多くの色を表現できる。シームレスな切り替えでグラデーションも可能である。 これらは一般的なフィラメント式のフレネル舞台照明よりも高価だが、舞台を始めコンサート・ライブ等で多く採用されている事例がある。 === 電子写真式プリンター内部の感光用光源 === 電子写真式プリンターとして一般的な[[レーザープリンター]]は、[[レーザー]]光の出力を直接変化させたり、[[液晶]]シャッターで強度を変調した光を、回転する[[ポリゴンミラー]](多角形鏡)に反射させて[[走査]]したりして、感光ドラム上に走査線を作り出している。光学系には高い精度が要求され、構造上どうしてもある程度以上の走光路距離を確保せねばならず、プリンターの小型化、低価格化は困難だった。 これを解決したのが、LEDアレイヘッドを使用した[[LEDプリンター]]である。微細加工したLEDを直線上に数千 - 数万個並べ<ref>通常の半導体加工のように、1回の加工で数千から数万個ならべる。</ref>、感光ドラム上の潜像の1ドット1ドットに対応するLEDで感光書き込みを行う。機械的駆動系(ポリゴンミラー)は不要になり、光学系は単純な収束レンズのみで済み信頼性向上とコスト削減、機器の小型化を実現している。ただし、主走査解像度がヘッドの集積度によって制限される、素子間のばらつき補正が必要、ドラムとLEDアレイが非常に近いために飛散したトナーが付着して出力物のクオリティ安定性に欠けるなどの欠点も持つ。 === 光通信用光源 === 駆動電流の変化に対し、光出力が高速応答するという特性を生かし家電製品等の赤外線[[リモコン]]や[[TOSリンク]]を始めとする[[光ファイバー]]通信の信号送信機、また[[フォトカプラ]]内部の光源に赤外発光LEDが広く使われている。 === 模型製作・改造用光源として === [[模型]]用点灯光源としても、価格低減と共にかつて使用されていた小型[[電球]]の代替として使用されるようになってきた。光色の制限から、かつては赤色光への使用が主だったが黄色、白色LEDの開発により前照灯や室内[[蛍光灯]]の白色光の再現も可能となった。さらに白熱灯の再現については電球色(淡橙色)LEDの開発により、実際の電球ではサイズや発熱などの理由で難しかった箇所も実感的な光色の再現が可能となった。特に、点灯機構を組み込むスペースが限られ、また部材が[[ABS樹脂|ABS]]や[[ポリスチレン]]樹脂などで作られているなど電球の発熱の面でも不利な場合があった[[Nゲージ]]を中心とした[[鉄道模型]]の場合、通常のレンズタイプからチップタイプへの移行により構造の小型化により実感の再現に大きく寄与し、これにより従来は実車のヘッドライト構造の関係で製品化が困難だった車種の製品化が実現した。コスト的には従来の電球使用より割高となっても実感的な模型の実現からユーザーに歓迎された面があり、分野としての消費量は少ないながらも実用照明器具での利用に先行して採用されている。また模型用途としては他にカーモデル用ディティールアップパーツや[[ミニ四駆]]用のタミヤ純正カスタムパーツなど、改造用LEDキットが存在する。 === ツェナーダイオードの代用品として === 電子回路内の基準電圧源として一般に使われる[[ツェナーダイオード]]は[[アヴァランシェ・ブレークダウン|アバランシェ降伏]]現象を利用しているため、出力電圧にわずかながら[[ノイズ]]を発生させてしまう。通常は[[フィルタ回路]]によってノイズを十分に減衰させる設計を取るが、[[オペアンプ]]をディスクリートで組む場合等、「そもそもノイズが発生しない基準電圧源」を追求して定電流駆動したLEDが使われる事例がある。 === 小信号ダイオードの代用品として === [[ディストーション (音響機器)|ディストーション]]や[[オーバードライブ (音響機器)|オーバードライブ]]のクリッピング素子として、シリコンダイオードやゲルマニウムダイオードの代わりに使われる場合がある。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 関連項目 == {{Commonscat|LED|LED}} * [[西澤潤一]] * [[中村修二]] * [[ダブルヘテロ接合]] * [[半導体レーザー]](レーザーダイオード) * [[バンド理論]] * [[pn接合]] * [[エレクトロルミネセンス]] * [[有機エレクトロルミネッセンス]](有機EL) * [[光起電力効果]] * [[電光掲示板]] * [[フルカラー]] * [[LED照明]] * [[LED標識灯]] * [[高エネルギー可視光線]], [[青色光網膜傷害]] {{Wikipedia/Ja}} {{DEFAULTSORT:はつこうたいおおと}} [[Category:ダイオード]] [[Category:光学]] [[Category:電子工学]] [[Category:光学機器]] [[Category:照明器具]] [[Category:日本の科学技術]]