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B層(―そう)とは、郵政民営化の広報企画にあたって小泉政権の主な支持基盤として想定された、「具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層」のこと。広義には政策よりもイメージで投票を行うなどポピュリズム政治に吸引される層を意味する。

概要[編集]

2005年、小泉内閣の進める郵政民営化政策に関する宣伝企画の立案を内閣府から受注した広告会社スリード[1]が、小泉政権の主な支持基盤として想定した概念である。その後、ポピュリズムに動員される国民層を揶揄する意味合いで使われるようになった。

スリード社の企画書では国民を「構造改革に肯定的か否か」を横軸、「IQ軸(EQITQを含む独自の概念とされる)」を縦軸として分類し、「IQ」が比較的低くかつ構造改革に中立ないし肯定的な層を「B層」とした。主に主婦や教育レベルの低い若年層、高齢者層を指すものとされる。

上記の企画書がネット等を通じて公に流布されたため、資料中に使用された「IQ」(知能指数)の語や露骨なマーケティング戦略が物議を醸すところとなり、国会でも取り上げられた(後述)。

階層分類[編集]

スリード社の企画書によれば、国民は以下の4層に分類される。

「A層」[編集]

エコノミストを始めとして、基本的に民営化の必要性は感じているが、これまで、特に道路公団民営化の結末からの類推上、結果について悲観的な観測を持っており、批判的立場を形成している。「IQ」が比較的高く、構造改革に肯定的。

構成
財界勝ち組企業大学教授マスメディアテレビ)、都市ホワイトカラーなど

「B層」[編集]

現状では郵政への満足度が高いため、道路などへの公共事業批判ほどたやすく支持は得られない。郵政民営化への支持を取り付けるために、より深いレベルでの合意形成が不可欠。「IQ」が比較的低く、構造改革に中立的ないし肯定的。

構成
主婦層、若年層、シルバー(高齢者)層など。具体的なことは分からないが小泉総理のキャラクター・内閣閣僚を支持する。

「C層」[編集]

構造改革抵抗守旧派。「IQ」が比較的高く、構造改革に否定的。

構成
上記以上の分析はない。

D層?(命名なし)[編集]

「IQ」が比較的低く、構造改革に否定的。

構成
既に失業などの痛みにより、構造改革に恐怖を覚えている層。

PR提言[編集]

郵政民営化の広報にあたっては、小泉政権の主な支持基盤とされる「B層」に絞ってPRを展開すべきとし、ネガティブな表現を極力避けたうえで、「B層」に伝わりやすい新聞折込みフライヤー(チラシ、ビラ)やテレビ・ラジオの広報番組を利用し、民営化の必要性を「ラーニング」させるよう提言。また、「A層はB層に強い影響力を持つ」として、「A層」向けに数万人規模のイベントを開催し、間接的に「B層」にも影響を与えるように提言した。

「C層」及び「IQが比較的低く、構造改革に否定的」な層についてはPRの対象外としている。

批判と反論[編集]

「IQ」の語を持ち出したため、“支持層や失業者など主権者である有権者を頭が悪いと馬鹿にしている”と批判が上がった。2005年6月29日の郵政民営化特別委員会で、共産党佐々木憲昭は、スリード社の企画書の概略を述べ、「竹中大臣に聞きます。これは余りにも国民を愚弄した戦略ではありませんか」と質問した[2]。竹中は「民間の企業の企画書でございますから、私はコメントをする立場にはございません。政府としては、そのような話を政府の中でしたという事実もございません」と答弁した。

スリード社側はこうした批判について、企画書内で分析軸として使用した“IQ”という言葉のみが抽出された一方的な解釈であり、名誉毀損であると再批判した。また、分析は情報戦略において行う通常手法に基づいて行ったものであり、指摘されるような差別的な意図は全く無く、また問題となった企画書はあくまで「会議用資料であり、内容の是非は、そこで行われた弊社の説明を含めて語られるべき」と反論したうえで、「内部資料とはいえ、こうした誤解を誘発する表現を行った」ことに対して謝罪した[3]

また、このことで、一部で偽文書説が出されていた上記企画書について、本物であることが確認された。

その他[編集]

  • インターネット上でも、政治政策の具体面には疎く、ルックスやキャラクターを判断材料にして、自民党の政治家、タレント政治家などを応援する人々のことを「B層」と揶揄する事も少なくない。

出典[編集]

  1. 当時の特命担当大臣経済財政政策担当金融担当郵政民営化担当)竹中平蔵の知人が代表を務めていた
  2. 郵政民営化法案 つぎはぎだらけの「修正」は矛盾だらけ 「政府広報」疑惑 住所には、スリード社「存在せず」佐々木憲昭オフィシャルサイト、2005年6月29日。
  3. 「郵政民営化フライヤー戦略」の内容に関する見解とお詫び』 スリード、2005年9月15日。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]