「構造定数 (数学)」の版間の差分
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2010年8月20日 (金) 01:04時点における最新版
分配多元環の構造定数(こうぞうていすう)とは、与えられた自由加群に対して、それを分配多元環とするための積構造を決定する定数のことである。
定義[編集]
環 R 上の自由加群 A に対し、その基底を {ei}i∈I とするとき、基底の間に積を
- <math>e_i e_j := \sum_{k\in I} \gamma_{i,j}^k e_k
\quad(\gamma_{i,j}^k \in R)
</math> (γi,jk の i, j, k は単なる添字)と定めると、A の一般の元での積を
- <math>
\left( \sum_{i \in I} r^i e_i \right)\left( \sum_{j \in I} r^j e_j \right) = \sum_{i,j,k \in I} r^i r^j \gamma_{i,j}^k e_k
</math> (ri, rj ∈ R) と一意的に決定して A を分配多元環にすることができる(このような積の入れ方を、「基底の積を "線型に拡張" する」 という)。この定数 {γi,jk}i,j,k∈I のことを多元環 A の基底 {ei}i∈I に関する構造定数とよぶ。定義から、もし添字集合 I が有限集合で n 個の元からなるならば、構造定数は(添字の i, j, k がそれぞれ n 通りであるから)全部で n3 個定まる。
例[編集]
複素数体 C の基底 {1, i} について、1 = e0, i = e1 と置くことにすると、
- e0e0 = 1 × e0 + 0 × e1,
- e0e1 = 0 × e0 + 1 × e1,
- e1e0 = 0 × e0 + 1 × e1,
- e1e1 = -1 × e0 + 0 × e1
となるから、C の積を定めるこの基底に関する構造定数(8 個ある)は
- γ0,00 = 1, γ0,01 = 0,
- γ0,10 = 0, γ0,11 = 1,
- γ1,00 = 0, γ1,01 = 1,
- γ1,10 = -1, γ1,11 = 0
となる。
同様にして四元数体 H は基底 {1, i, j, k} に対して
1 | i | j | k | |
---|---|---|---|---|
1 | 1 | i | j | k |
i | i | -1 | k | -j |
j | j | -k | -1 | i |
k | k | j | -i | -1 |
で積が定義されている。したがっていま、1 = e0, i = e1, j = e2, k = e3 とおくと、この基底に関する H の構造定数(全部で 64 個)は
e0 | e1 | e2 | e3 | |
---|---|---|---|---|
e0 | γ0,00 = 1, γ0,01 = 0, γ0,02 = 0, γ0,03 = 0 | γ0,10 = 0, γ0,11 = 1, γ0,12 = 0, γ0,13 = 0 | γ0,20 = 0, γ0,21 = 0, γ0,22 = 1, γ0,23 = 0 | γ0,30 = 0, γ0,31 = 0, γ0,32 = 0, γ0,33 = 1 |
e1 | γ1,00 = 0, γ1,01 = 1, γ1,02 = 0, γ1,03 = 0 | γ1,10 = -1, γ1,11 = 0, γ1,12 = 0, γ1,13 = 0 | γ1,20 = 0, γ1,21 = 0, γ1,22 = 0, γ1,23 = 1 | γ1,30 = 0, γ1,31 = 0, γ1,32 = -1, γ1,33 = 0 |
e2 | γ2,00 = 0, γ2,01 = 0, γ2,02 = 1, γ2,03 = 0 | γ2,10 = 0, γ2,11 = 0, γ2,12 = 0, γ2,13 = -1 | γ2,20 = -1, γ2,21 = 0, γ2,22 = 0, γ2,23 = 0 | γ2,30 = 0, γ2,31 = 1, γ2,32 = 0, γ2,33 = 0 |
e3 | γ3,00 = 0, γ3,01 = 0, γ3,02 = 0, γ3,03 = 1 | γ3,10 = 0, γ3,11 = 0, γ3,12 = 1, γ3,13 = 0 | γ3,20 = 0, γ3,21 = -1, γ3,22 = 0, γ3,23 = 0 | γ3,30 = -1, γ3,31 = 0, γ3,32 = 0, γ3,33 = 0 |
となる。
あるいは、適当な群 G で添字付けられる基底 {eσ}σ∈G をもつ自由加群 A に
- <math>\gamma_{\sigma,\lambda}^\mu := \delta_{\sigma\lambda,\mu}</math>
(δ はクロネッカーのデルタ、すなわち σ と λ の積が μ に一致するとき 1 でそれ以外のときは 0)を構造定数として積を入れたものは G 上の群環になる。同様に 2-コサイクル f を与えて
- <math>\gamma_{\sigma,\lambda}^\mu :=
f(\sigma,\lambda)\delta_{\sigma\lambda,\mu}
</math> と与えれば、G 上のねじれ群環あるいは接合積と呼ばれる結合多元環が得られる。
性質[編集]
構造定数 {γijk}i,j,k∈I が
- <math>
\sum_{p \in I} \gamma_{ij}^p \gamma_{pk}^l = \sum_{q \in I} \gamma_{jk}^q \gamma_{iq}^l
</math> が任意の i, j, k, l ∈ I について満たすことと、これが決定する分配多元環の積は結合法則を満たすこととは同値である。また、上に挙げた例では全てこれが満たされている。とくにねじれ群環の場合に、この等式はコサイクル条件そのものになる。
関連項目[編集]
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