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2016年11月21日 (月) 16:42時点における最新版

渚カヲル(なぎさ カヲル)は、『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する架空の人物であり、使徒。使徒としての名前はタブリス(TABRIS)。声優石田彰

プロフィール[編集]

  • 生年月日:2000年9月13日(15歳)
  • 血液型:不明
  • エヴァンゲリオン弐号機パイロット(フィフスチルドレン

人物[編集]

セカンドインパクトの際にダイブされたヒトの遺伝情報を基にアダムより生み出されたヒトとアダムのハイブリッド。後にその肉体にはゼーレが回収したアダムの魂を宿され、フィフスチルドレンとして特務機関NERVに送り込まれた。データ上の生年月日はセカンドインパクトと同じ日で、その他の個人データは全て不明。常に微笑みを浮かべ、アッシュグレイの髪と赤い瞳、極端に白い肌を持つ美少年。プラグスーツの色は黒色。綾波レイの正体を知る人物であり、彼女の自爆などの影響で傷心の碇シンジに近づき魅了する。シンジに対しては好意を示し、人類全体に対する態度には人ならぬ者としての達観も見られる。レイに対しては外見上の共通点に加えて繋がりを示唆した。

その正体は第17使徒タブリス(新劇場版では第一の使徒アダムスの生き残り)である。自身は人間態として生まれたゆえに攻撃能力を持たないが、強力なA.T.フィールドを展開し、空中を自在に浮遊できる。アダムの魂を持つがゆえ、魂さえ無ければアダムより作られたEVAならば同化し、自在に操ることができる。自身の魂はアダムのものであるが、肉体の出生に関しては不明である(製作スタッフ曰く「特に設定はない」[1]とのこと)。

EVA弐号機を遠隔操作してNERV本部のターミナルドグマへ侵入し、アダムと接触を試みるも、そこにあるのがリリスであることを察知すると接触を中止。自ら望んでEVA初号機によって握殺され、その頭部はターミナルドグマ内のL.C.Lへと落ちていった。

人類の補完が行われている最中、レイとともにシンジと対話を行い、最終的に補完を拒絶したシンジを見送った。死生観自殺願望を抱えていた様子。作品世界の核心を知る存在である彼の謎めいた言葉の数々は、その後の展開を示唆するものが多い。

キャラクター造型[編集]

モデルは庵野秀明の友人であるアニメ監督の幾原邦彦(ただし外見上なのか性格上のモデルなのかは不明[1])。キャラクターデザインの貞本義行はシンジを意識しながら耽美的にデザインしたと語っており、最後の使徒という設定のもと、使徒と接触した全ての人間の特徴を入れるのがコンセプトだという。たとえば首の細さはシンジ、赤い眼はレイ、口の不敵な感じはアスカが元になっている[2]

「渚カヲル」のネーミングは脚本を務めた薩川昭夫による[3]。由来は、映画監督の大島渚からで、「渚」は綾波レイの「波」と対になっている[4]。または姓は偏と旁を分けると「シ者」[3]、すなわち使者(→使徒)であり死者、名前は「オワリ」を五十音順で1字後にずらしたものから「カヲル」、姓と合わせると「シ者オワリ」→「渚カヲル」となる言葉遊び。つまりは「最後の使徒」であり「最後のシ者」であるとの隠喩である。これは弐拾四話のタイトルにも掛かっている。タブリスの由来はユダヤ・キリスト教伝承の「自由意志」を司る天使タブリスから。この名前は本編中では明らかにされず、後に劇場版パンフレットなどで示された。

貞本自身は「子供っぽいキャラクター」としてデザインした経緯があったため(漫画版の項で後述)、石田彰のキャスティングが好評を博したことを認めながらも「もっとかわいい声をイメージしていた」とイメージの相違に言及していた[5]。だが2008年には「結果的には、石田さんの声にもってかれるというか、そのアンバランスさがカヲルの魅力になった」と語った[6]

漫画版[編集]

使徒アラエル戦の前から登場し、読者には当初からゼーレが用意した最後の使徒・タブリスであることが示されている。超然としつつも社交性に長けた存在であったアニメ版とは大きく異なり、登場当初は親とはぐれた野良猫の子を「このまま生かしておいても苦しんで死ぬだけ」との歪んだ善意から絞め殺し、他者のために激昂するシンジを奇妙と評するなど、ヒトの心を理解できない存在として描かれている。また、シンジとの交流はアニメより多かったものの度重なる事件でシンジが疲弊していたこともありシンジに拒まれ続けていた。アラエル戦後にアスカのリタイアにより弐号機パイロットに正式に任命され、使徒アルミサエル戦に出撃している。アルミサエルに侵食を受けた際、レイのシンジへの想いに触れ涙を流したことを切っ掛けにヒトの心を知っていき、好きという感情にこだわり感情を露にするなど、人間じみた言動を見せる。最後はターミナルドグマへ侵入し、アダム(リリス)の元へたどり着くが、それがリリスであることを悟ると、シンジに自分の運命とサードインパクトについて語った後、初号機の掌で扼殺される。

アニメ版と漫画版における彼の違いについては、アニメ版では、庵野らによる「不完全な自分(シンジ)と完璧な自分(カヲル)という2人のキャラクターを出す」というアイデアの下、「完璧なもう一人の碇シンジ」として設定されている。これに対して、貞本は「当初の構想から子供っぽいキャラクターとしてデザインし、無邪気なカヲルのイメージがずっと自分の中に強く残っていた」から、漫画版における人物像は、こうしたイメージが反映されたものになっている。

パラレル作品[編集]

新劇場版[編集]

主に「ゼーレの少年」と呼称されている。

『序』の段階から、庵野秀明により新劇場版の設定やカヲルの役割などについてのレクチャーをキャスト陣で唯一受けているという石田彰は、『Q』収録後のインタビューでカヲルについて「前のサイクルとは違う筈なのに、何度やってもやはり同じ轍を踏んでしまう。それでも線路のポイントを違うところに切り替えてみたい。大きなものの流れに対して、なんとかあがいてみたいという想いがあって、生き残るべきシンジの身代わりになっていくんでしょうね」と語っている。

新劇場版:序[編集]

短時間ながら、ラストにおいて月面(静かの海)にある複数の棺のうちの1つから裸身で目覚める。宙に浮かぶモノリスの立体映像(旧作におけるキール・ローレンツ)と会話することから、ゼーレとは旧作と同じくつながっていることが窺えるが、この時点で面識の無かったシンジの名を既に知っており、「また3番目とはね。変わらないな君は」と呟くなど、彼に興味を抱いている様子を窺わせる。

新劇場版:破[編集]

3シーン1分程度の登場であるものの、事態が動こうとする局面においてその姿を見せる。

月面では建造中のエヴァンゲリオンMark.06の指先に上半身裸で座っており、その姿を目撃したゲンドウと冬月へ振り返って「はじめまして、お父さん」と呟く。また、終盤ではMark.06に乗ってNERV本部上空へ現れ、初号機へカシウスの槍を投擲してサードインパクトを阻止すると共に「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」とシンジへの決意を呟く。

新劇場版:Q[編集]

初号機の覚醒(ニア・サードインパクト)から14年後、EVA第13号機のパイロットとしてNERVに所属。肉体はシンジやアスカ、マリと同様、15歳のまま(生まれつきかエヴァの呪縛によるものかは不明)となっている。ピアノを愛好しており、14年の眠りを経て友人も知人もいなくなり孤独になってしまったシンジをピアノの連弾に誘い、次第に友情を深めていく。

14年の間に何があったか知りたいというシンジに対し、シンジにしてみれば綾波レイを救おうとした行動が、世界を荒廃させる大惨事に繋がったという現実を見せる。さらにレイも救えていなかったことに落胆するシンジを「自分達2人なら世界を修復できる」と励まし、彼の首に付いていたDSSチョーカーを外して自らの首に付ける。

シンジと共に搭乗した第13号機でセントラルドグマを降下し、改2号機と8号機の妨害をかいくぐりながら、リリスの骸に刺さっていた槍を手に取ろうとしたが、そこにあるはずの槍がカシウスとロンギヌスの1本ずつではなく、ロンギヌスが2本であることに違和感を憶えて動揺する。シンジを制止するが、彼は強引に槍を手に取ってしまったために第13号機が覚醒すると同時に、自身も「第13の使徒」として(この時カヲルは、「第一使徒であるはずの僕が十三番目の使徒に堕とされるとは」と言っている)新たな惨劇「フォースインパクト」のトリガーとなってしまった。

世界の修復どころか新たな破壊を誘発したこと、さらにエヴァの覚醒に伴うDSSチョーカーの作動によってカヲルが死んでしまうということに愕然として涙するシンジを慰め、「そんな顔をしないで。また会えるよ、シンジ君。」という最期の言葉を遺し、首を吹き飛ばされて死亡した。しかし、その直前にカヲルが第13号機のコアに2本の槍を突き刺していたために覚醒状態は解除され、フォースインパクトは初期段階で抑えられた。

ゲーム版[編集]

新世紀エヴァンゲリオン2』では、説得に成功すると人類との共存を望み、パイロットとして参入する。その際、消失したはずのEVA4号機をどこからともなく呼び出し、自らの乗機としてNERV本部にもたらす。

名探偵エヴァンゲリオン』ではEVA乙型、『新世紀エヴァンゲリオン バトルオーケストラ』ではEVA乙号機に、パチンコパチスロでは『CR新世紀エヴァンゲリオン 〜使徒、再び〜』以降EVA四号機に搭乗する。基本的にパチンコ・パチスロではプレミアムキャラクターとしての扱いであり、液晶画面に何らかの形でカヲルもしくは四号機が登場した時点で、パチンコであれば出玉アリの確変大当たり、パチスロであればボーナス確定となることが恒例となっている(例外としてチャンスボタン予告の無言は初代ではガセ、セカンドインパクトではスーパーリーチ、奇跡の価値は・使徒、再びでは高期待度、最後のシ者以降では必ず喋る。セカンドインパクトでのシンクロリーチでは暴走モードアリ。他にはパチスロ『新世紀エヴァンゲリオン 〜魂の軌跡〜』の「カヲル覚醒モード」があるが、これは次回ボーナスまで続くリプレイタイムなので、プレミアムであることは変わらない)。ただし、パチンコ5作目の『CR新世紀エヴァンゲリオン 〜最後のシ者〜』にはカヲル登場時でもハズレの場合もある予告が1つだけ存在する。それはチルドレンモード(時短中)、パソコン画面に碇シンジ惣流・アスカ・ラングレー、ペンペンと共に登場する予告で30.7%の期待度である。

スーパーロボット大戦シリーズでは、ストーリーの真意に絡むことが多く、他作品のキャラクターとも意味深な会話することがある。基本的にスポット登場で、プレイヤーキャラクターとして使えるケースは少ない[7]

その他[編集]

栗山千明沢尻エリカは「理想の男性」として名を挙げるなど有名人のファンも多い。 ファンブック『ALL ABOUT 渚カヲル A CHILD OF THE EVANGELION』が2008年に発売された。内容は貞本義行へのロングインタビュー、漫画版のダイジェストなどである。

ちなみに声を担当している石田彰は、パチンコやパチスロ、エヴァショップの店内アナウンスなどで「カヲルがおよそ言わないであろう台詞を言わなければならないのが難しい」と語っている。

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 「EVA友の会」第拾弐号
  2. 『少年エース7月号増刊 新世紀エヴァンゲリオンコミック総集編』754ページ。
  3. 3.0 3.1 庵野秀明旧公式ホームページ
  4. WEBアニメスタイル小黒祐一郎第57回より[1]
  5. SFオンライン35号(2000年1月24日発行)インタビューより[2]
  6. 『ALL ABOUT 渚カヲル A CHILD OF THE EVANGELION』インタビューより
  7. 現時点で使用できたのは『第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ』のみで、EVA零号機・改に乗ってのスポット参加である。