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2020年1月17日 (金) 18:09時点における最新版
魔法(まほう)とは、現実には不可能な手法や結果を実現する力のことである。この語彙を用いるのは主に欧州系のそれに対してであるが、英語ではMagic(魔術、魔法、呪術、手品)、Sorcery(妖術、魔法、魔道)、Wizardry(魔法、妙技)、Witchcraft(魔女術)、など複数の言葉と微妙に異なった概念をもつため、該当語のない日本語訳については、訳語が訳者により異なり混乱している。
目次
言葉の定義[編集]
魔法[編集]
日本では「魔法」という言葉は、それらの神秘的で超常的な力または行為の中でも、特に西洋由来のものを指す言葉としてよく使われる。これは元々魔法という語が明治以降に外国語の訳語として作られた新しい言葉であることが大きい。
魔法という語には非常な魅力があり、魔法瓶やマジックインキ、マジックテープといった商品名に使われることもある。
また日本では「魔法」といえば、メルヘンやおとぎ話、あるいは子供向けを主とした「他愛のない不思議な力や方法」を指すときの言葉としてよく使い、たとえフィクションであったとしても難しい理屈や深遠な原理が背景に存在するとされるものについては「魔術」などと呼ぶことが多い。
そう言った「魔法」のイメージは、アンデルセンやグリム兄弟の童話などが日本に輸入された際に与えられた「魔法使い」たちの印象が根底にあると考えてよい。
Magic[編集]
西洋では Magic の語は現実の魔術の意味と同時に手品、奇術の意味でも用いられていた。さらに、ディズニーを初めとする近代以降の作品のエンターテインメント性が与えた影響により、伝統的な魔術と関係のない「魔法」や「魔法使い」たちの印象が重複し、定着した。
意味合いの違い[編集]
定義からわかるとおり、その意味するところが厳密ではないこと。また各々の意味合いの違いを表現するために、類義語が非常に多い。基本的に、「法」「道」「術」は能力と方法論を同時に表し、「力」は能力のみを指す。
以下に代表的な類義語それぞれの意味合いの違いを示すが、特に使い分けられていない時には大きな違いが無い場合も少なくない。
魔法[編集]
西洋由来の「神秘的な力とその方法論」であるMagicの訳語として、仏の法である仏法に対し、仏ならぬ魔の法である「魔法」としたもの。後に魔術という語ができたため、総合的な訳語としての地位は取って代わられた。
今日では、明治以降に紹介された外国のメルヘンやファンタジーに「善い魔法使い」「悪い魔法使い」が両方登場する事により、「手品ではない」不思議の力に正邪の前提を含まず用いられる。
魔道[編集]
「魔法」と同様に、神の道である神道に対し、魔の道である「魔道」としたもの。
本来は能力や現象を指す言葉ではなく、生き方、考え方を指す。意味合いとしては茶道・剣道などと同じ位置づけである。「冥府魔道に落ちる」などと使われるため、邪悪な死者の力の印象を強く残している。しかし実際には「魔法」と同じ概念で使われることが多い。
魔導[編集]
魔道が「生き方」なのに対して、魔導は教えを説く「人間」を指す。「魔道師」と「魔導師」はそれぞれ「魔道-師」と「魔-導師」であり、意味が異なるため、単に「魔導」と使うのは誤りであり、「師」を付ける必要がある。
魔術[編集]
手品師の興行にあたっては、「魔法」や「魔道」では宗教的な意味合いを持つので不適切であった。そのため、それらから独立した表現として「魔術」という語が好んで用いられるようになった。この場合、手品師は魔術師と呼ばれることになる。
そのため、原語であるmagicに最も近いのが魔術である。魔法、魔道と同じ概念を示すと同時に、「神秘的な力」ではない「手品」をも示す。
奇術[編集]
主に「奇術師」として用いられる場合が多く、明確に手品であるという意味合いを持つ。
仙術[編集]
明確に道教の影響下にある語で、仙道が修行により習得した「手品ではない」超常の力とその体系。妖怪の妖術が狭義には半ば先天的な妖力に基づく能力・方法論であるのに対し、道士を経た人間であった仙人・妖怪仙人の区別なく、後天的に習得するものを仙術とする。
妖術[編集]
明確に手品ではないという意味合いを持つ。「魔法」以前には「神秘的な力」を示す最も汎用的な語であった。
「魔法」以前から使われていたことから、フィクション等の作品では東洋風の雰囲気を持たせたい場合に用いられることがある。
また妖術の語源が「妖怪が人間を惑わすために用いる神秘的な力(=妖力)を用いる術」であることから、妖術を用いる者は人に在らざる者もしくは人外の類に組する者として邪悪であるという意味合いを持つ場合がある。妖怪を始め妖気、妖言、妖雲、妖星、妖艶、妖姫、妖婦、妖狐、妖魔等々「妖」が付く言葉の多くが悪い意味を持つことから邪悪であるという印象を持たせるというのも一因であろう。
しかし「神秘的な力」を示す最も汎用的な語としての地位を「魔法」や「魔術」に取って代わられた現在ではともかく、それ以前の古典や文学作品においては、長い歴史を経るうちに悪い意味を失って汎用的な語として使われていたことに注意するべきである。でなければ作品自体の意味が通じない場合すらある。
幻術[編集]
忍術(視覚トリックと体術と秘伝の科学知識による体系)と並んで時代小説などに登場する不思議の術だが、最終的には光学や催眠術や薬物を用いたトリックが種明かしされる事が多い。いずれも最後まで超常的な力として描写されることはない。
方術[編集]
陰陽道における「仙術」相当の用語。
呪術[編集]
神秘的な力全般を「呪い(まじない)」といい、その中でも特に他人に害を与える神秘的な力を「呪い(のろい)」という。そしてそれらを行使する「術」が「呪術」であり、行使する者を「呪術師」と呼ぶ。明確に手品ではないという意味合いを持つ。
妖術が妖怪の存在を前提としていることから、現代においては「妖術」が不適切であるために呪術が用いられる場合がある。例として、神秘的な力を用いて治療する医師を「呪術医」と呼ぶことなどが挙げられる。しかし一般に呪術といえば他人に害を与える「呪い(のろい)」の術であり、邪悪な印象が強い。
法力・神通力[編集]
仏教乃至修験道の影響下にある語で、修行により習得した「手品ではない」「宗教的な」超常の力。力を発現させる方法論より能力そのものを指す意味で、上記例とは概念が異なる。
超能力[編集]
明確に手品ではないという意味合いを持つと同時に科学と共存可能な「神秘的な力」であるという意味合いを持つ。このため、神や悪魔、精霊、妖精、幽霊等々の非科学的なものが一切関与していないという特徴がある。
先天的素質に基づく能力であり、方法論ではない。詳細に関しては超能力を参照のこと。
Magic[編集]
マギ(MAGI)が神秘的な知識(占星術)を用いて予言することから、神秘的に見える行為を行うことを「マギのような」と表現することになったもの。歴史的には手品であったという。現在では最も汎用的な語として使われている。
Wizardry[編集]
経験を積んだ年長者は、時に若輩者には神秘的としか思えない行為をしてみせることがある。翌日の天気を言い当てたり、甘いスイカを選り分けたり。
そうした年長者は賢い(Wize)者という意味でWizardと呼ばれ、その行為はWizardryと称えられた。そのため、昔話に登場する魔法使いには老人が多い。
彼らは元々人間で、経験を積み知識を蓄えた賢い者達である。当然人間の味方であるという意味合いを持つが、老人らしい気難しさも併せ持つ場合もある。
Witchcraft[編集]
悪魔と契約した者(Witch/魔女)が、契約した悪魔から契約に基づいて力を借りることで用いる「神秘的な力」を示す。明確に邪悪な意味合いを持つ。魔女の力は強大なものから弱い呪いや薬物作成の類までまちまちである。
詳細に関しては魔女を参照のこと。
Sorcery[編集]
手品ではない「神秘的な力」を示す。その意味では「妖術」が最も近いが、Sorceryは基本的に善悪の意味合いを持たない。そのため、単に手品ではないことを強調する時にも用いられる。
しかし、Wizardryを使うWizardが「人間の味方」である意味合いを持つことから、わざわざSorceryを使うSorcererと表現された場合にはあまり良い意味を持たない場合が多い。
フィクションと魔法[編集]
前述のように、魔法は物語において極めて魅力的な主題あるいは小道具である。このため、娯楽作品における魔法は、全くの架空でありながら多くの人々の思索と知恵が積み重ねられている。
しかしながら、一部の作品では理屈に合わない御都合主義的な展開について「魔法だから」という説明が安易に使われることもある。
ゲームの影響[編集]
ゲーム、特にロールプレイングゲームでは、一度に多数の敵にダメージを与えたり、回復や防御などで味方を有利にするなど、単調になりがちな戦闘を面白くする一要素である。また、ファンタジーを題材として魔法を主要なテーマの一つとして扱うものが多い。こうしたゲーム中の魔法は、伝統的な魔術に取材することもあるが、異世界を舞台にするものが多いこともあり、作品ごとに独自の定義や分類が行われる。ゲーム人気の高まりとともに、魔法のイメージに対してゲームが与える影響も強くなっている。
フィクション中における体系化の是非[編集]
フィクションの創作にあたっては、作中の魔法の動作原理を定義付け、体系化することは、想像上の不可思議な力である魔法の神秘性を損なうものと考える者もいる。それとは逆に、魔法の原理を定義することは、作品のリアリティと独自性を生み出す重要な要素であるという考えもある。
前者はエブリデイ・マジック的な作品に、後者はロールプレイングゲームやアクション性の強い作品などによく見られる。前者は「不思議」を不思議であるがままに受け入れるテーマから、後者はゲームとして運用していく際の必要性や、魔法の描写や作中世界の奥行きを増すためと考えられる。
娯楽作品での魔法の動作原理は様々であるが、作中では以下のような動作原理がよく用いられている。
- 個人の空想や願望をそのまま具現化させる魔法
- 聖霊や神の力の一部を発現させる「神秘要素」の高い魔法
- “マナ”等の名称が付される特殊な性質を有する仮想の物質に呪文等の手段で働きかける魔法
- 「高レベルの科学」により世界法則を書き換える技術を指す魔法
魔法の道具[編集]
フィクションの世界において、魔法は人がその場で使うほかに、魔法の力を持つ道具(アイテム)という形でも登場する。大きく分けると、魔法を使う者を補助する道具(魔法の杖や帽子、あるいは箒など)と、本来の役割とは別に魔法がかけられているものがある。
前者については、魔法少女アニメでよく用いられる魔法のステッキ(杖)やコンパクトなど、後者の例としては、白雪姫や雪の女王に登場する魔法の鏡などがある。
魔法とみなされる主要なものの分類や系統[編集]
伝説[編集]
実在する文化としての呪術・魔術[編集]
- アジア
- 欧州
- アメリカ大陸
小説・漫画[編集]
以下には体系的な魔法分類がなされている創作を取り上げる。
- スレイヤーズの魔法体系
- 黒魔術・精霊魔術(・白魔術)・神聖魔法
- ロードス島戦記の魔法分類(ソードワールドの魔法分類もこれに準じて設定された)
- 古代語魔法・精霊魔法・神聖魔法・呪歌
ゲーム[編集]
- ドラゴンクエストシリーズの呪文体系
- ファイナルファンタジーシリーズの魔法形態
- 白魔法・黒魔法・召喚魔法・青魔法
魔法的な(≒架空の)存在・生物[編集]
魔法を題材にした存在や作品など[編集]
この節を書こうとした人は途中で寝てしまいました。後は適当に頑張って下さい。 |
小説[編集]
- 『魔法株式会社』 - SF小説作家ロバート・A・ハインラインの傑作短編の一つの邦題の小説であり、同名の傑作集がハヤカワ文庫から刊行されている。
- 『魔法の国ザンスシリーズ』 - ピアズ・アンソニイ著の小説。魔法の存在やその影響が主要な主題。
- 『水滸伝』 - 公孫勝、樊瑞、戴宗、高廉などの道士や道士崩れが道術、妖術の類を繰り出す中国三大奇書の一つ。これを題材にした横山光輝の漫画作品もある。
- 『ハリー・ポッターシリーズ』 - J・K・ローリング著のファンタジー小説。主人公ハリーの魔法学校での生活と強大な魔法使いヴォルデモートとハリーとの戦いを描いた物語。または同名の映画作品。
漫画・アニメ[編集]
- 『魔法先生ネギま!』 - 赤松健の漫画作品。アニメ化もされた。
- 『魔法遣いに大切なこと』 - 漫画・アニメ・小説で発表された。現代日本に魔法が存在したらという設定で描かれる。
- 『ドラえもん のび太の魔界大冒険』 - 大長編ドラえもんシリーズの第5作目、または1984年に公開された同名の映画作品。2007年にリメークもされた。
- 『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』 - 1996年に公開された映画『クレヨンしんちゃん』シリーズの第4作目。
ドラマ[編集]
- 『奥さまは魔女』 - もとは1942年に公開された米国の映画作品。その後放送された1964年から1972年まで米国のABC放送で全254話のドラマが有名。2004年に日本で米倉涼子主演の同名のリメイクドラマが作られ、2005年に米国で同名の映画作品が公開された。
映画・特撮[編集]
- 『魔法戦隊マジレンジャー』 - 特撮シリーズ・スーパー戦隊シリーズの第29作。
魔法が登場する童話[編集]
主人公の助力者が魔法を使うことが多いが、逆に敵対するものが使うこともある。
- シンデレラ(グリム童話、ペロー童話集) - 助力者が使う。ぼろ服をドレスに、カボチャを馬車に変える。
- 白雪姫 - 敵対者が使い、毒リンゴや毒の櫛、魔法の鏡として現れる。
- 人魚姫(アンデルセン) - 助力者が使い、人魚の尾を人の足へと変える。
- オズの魔法使い
参考文献[編集]
- カート・セリグマン 『魔法―その歴史と正体』 ISBN 4409030361
- かつて平凡社の世界教養全集の一冊として抄訳が出ていたものの全訳版。
- ゲリー・ジェニングズ 『エピソード魔法の歴史―黒魔術と白魔術』 ISBN 4390110101
- リチャード・キャヴェンディッシュ 『魔術の歴史』 ISBN 4309230431
- 山北篤 『魔法・魔術』 新紀伝社 2000年 ISBN 4-88317-347-X
- 脇明子 『魔法ファンタジーの世界』 岩波新書 新赤版1020 岩波書店 2006年 ISBN 4-00-431020-2
関連項目[編集]
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