橋本龍伍のソースを表示

'''橋本 龍伍'''（はしもと りょうご、[[1906年]]（[[明治]]39年）[[6月2日]] - [[1962年]]（[[昭和]]37年）[[11月21日]]）は、[[日本]]の[[大蔵省|大蔵]][[官僚]]、[[政治家]]。[[衆議院|衆議院議員]]（6期）。[[正三位]][[勲等|勲一等]]。

第82代・第83代内閣総理大臣[[橋本龍太郎]]及び元[[高知県]][[知事]][[橋本大二郎]]の実父。前衆議院議員[[橋本岳]]の祖父。

== 概要 ==
少年の頃に[[結核]]性の腰椎[[カリエス]]にかかり、11年に及ぶ闘病生活を送り生涯[[杖]]を離せない身体となった。苦学して[[第一高等学校 (旧制)|第一高等学校]]、[[東京大学|東京帝国大学]]法学部を卒業、[[大蔵省]]を経て[[吉田学校]]の一員として[[文部大臣]]、[[厚生大臣]]等を歴任した。

== 略歴 ==
* [[1906年]]6月 - [[東京府]][[荏原郡]][[目黒村]]に[[大日本麦酒]]（現・[[サッポロビール]]）社員 [[橋本卯太郎]]・マツの五男として生まれる<ref>『岡山県歴史人物事典』には“[[東京都]]出身”と記載されている。</ref>。<ref>議員時代は[[総社市]]出身を自称していた。</ref>。
* [[1928年]]3月 - [[逗子開成中学校・高等学校|逗子開成中学]]卒業
* [[1931年]]3月 - 第一高等学校文科乙卒業
* [[1934年]]3月 - [[東京大学|東京帝国大学]]法学部法律学科独法科卒業
* [[1934年]]4月 - 営繕管財局属兼大蔵属
* [[1935年]]5月 - 兼[[関東軍]]司令部付（〜12月）
* [[1936年]]6月 - 司税官 [[広島市|広島]][[税務署]]長
* [[1937年]]5月 - 大蔵事務官 主計局
* [[1938年]]12月 - [[興亜院]]事務官政務部第一課
* [[1941年]]6月 - 大蔵事務官 為替局
* [[1942年]]11月 - 外資局
* [[1945年]]3月 - 兼総務局 大蔵書記官 大臣官房戦時施設課長
* [[1945年]]9月 - [[内閣調査局]]調査官 
* [[1947年]]6月 - [[経済安定本部]]財政金融局企業課長 [[独占禁止法]]立案に携わる
* 1947年10月 - [[吉田茂]]に政界入りを勧められ退官
* 1947年10月 - [[第2次吉田内閣]]で内閣官房次長に就任
* [[1949年]]1月 - 衆議院議員選挙で岡山2区より[[民主自由党 (日本)|民主自由党]]公認で出馬し当選
* [[1951年]]7月、12月 - [[第3次吉田内閣第2次改造内閣]]、[[第3次吉田内閣第3次改造内閣]]で厚生大臣兼行政管理庁長官に就任
* [[1958年]]6月 - [[第2次岸内閣]]で厚生大臣に就任
* [[1959年]]1月 - [[第2次岸内閣]]で文部大臣に就任
* [[1962年]]11月 - 喉頭[[悪性腫瘍|癌]]により東京麻布の自宅において死去 葬儀委員長は[[佐藤栄作]]　墓は[[岡山県]][[総社市]]の[[宝福寺]]にある

== 栄典 ==
* [[1962年]]11月21日 - [[瑞宝章|勲一等瑞宝章]]

== 家族・親族 ==
; 実家
*父 [[橋本卯太郎|卯太郎]]（実業家･[[大日本麦酒]]の元[[常務]]）
*母 マツ（熊本県、軍人[[石光真清]]　陸軍中将[[石光真臣]]の妹）<ref>石光家は身分の軽い[[武士]]であったが､[[細川氏|細川家]]が[[肥後]]入国の時からお供をした[[家柄]]であり、代々[[殿]]のお側に奉仕していたから特別の取り扱いを受けていた（[[石光真清]]著『城下の人』17頁）</ref>
*兄 [[橋本宇一|宇一]]（学者）、[[橋本宙二|宙二]]（軍人）、[[橋本乾三|乾三]]（官僚・[[検事]]）
; 自家
*先妻 春子（埼玉県、官僚、政治家[[大野緑一郎]]（元[[警視総監]]）の長女）
*後妻 正（兵庫県、官僚、政治家[[若宮貞夫]]の四女）
*長男 [[橋本龍太郎|龍太郎]]（政治家・首相）…先妻との間の子
*二男 [[橋本大二郎|大二郎]]（政治家）…後妻との間の子

== 系譜 ==
; 橋本家

: 父[[橋本卯太郎]]は[[岡山県]][[吉備郡]]秦村（現在の[[総社市]]）の[[農家]]に生まれ、[[新聞配達]]をしながら苦学して東京高等工業学校（現在の[[東京工業大学]]）を卒業。同郷の[[馬越恭平]]日本ビール社長に見込まれて入社し、[[酵母]]を扱う技師から[[常務]]に出世した<ref>[[橋本卯太郎]]について、『明治大正人物史』には｢[[明治]]二年三月生る。[[岡山県]]人橋本源三郎の長男なり。同三十一年養兄富平方より分れて一家を創立す。幼より沈着誠実､悠々として迫らざる態度は大人の風ありて、その大成を嘱望せらる。長じて東京高等工業学校に学び、二十七年同校機械科を卒業するや、直ちに[[大日本麦酒|大日本麦酒株式会社]]に入る。温厚円満の人格と、機宜に当る手腕とは君をして工務部長に累進、更に[[常務取締役]]に挙げしめ、現にその任にありて活躍しつつあり。書画骨董に趣味を有し、閑日月を活動の間に求むるところ奥床しとも云ふ可し。｣とある。[[橋本明]]著『戦後50年・年譜の裏面史　昭和抱擁　<small>-天皇あっての平安-</small>』　112頁には｢現橋本龍太郎首相の祖父卯太郎は[[百姓|農民]]だった。[[岡山県]][[吉備郡]]秦村（現・[[総社市]]）が[[高梁川]]の氾濫で水没すると上京、[[新聞配達]]をしながら苦学して高等工業学校を卒業。[[馬越恭平]]日本ビール社長に見込まれ入社した。当時[[専務]]をしていた[[石光真澄]]が卯太郎の人柄を見抜いて「妹・真都を嫁に…」と望み、二人は馬越の媒酌で[[結婚]]する。[[酵母]]を扱う技師から[[常務]]に出世した卯太郎は8人の子宝に恵まれた。男六人には｢宇宙乾坤龍虎｣に数字をつけて命名した。｣とある</ref>。東京高等工業学校長、科学技術庁金属材料研究所初代所長などを務めた冶金学の[[橋本宇一]]、戦艦大和に搭載した電波探知機開発に参加した海軍大佐の[[橋本宙二]]、正義派検事で鳴らした[[橋本乾三]]などは実兄、元東北大教授の[[橋本虎六]]は実弟。今上天皇の学友として知られる[[橋本明]]（ジャーナリスト）、外交官の[[橋本宏]]などは甥である。

<pre>
　　　　　　　　　　　　　┏橋本宇一
　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┣橋本宙二
　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┣橋本乾三━┳橋本實
　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　┣橋本明
　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　┃
　橋本源三郎━橋本卯太郎━┫　　　　　┗橋本宏
　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┣橋本坤四郎
　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┃　　
　　　　　　　　　　　　　┣橋本龍伍━┳橋本龍太郎━┳橋本龍
　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　┃　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　┗橋本大二郎　┗橋本岳
　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┗橋本虎六━━橋本敬太郎
</pre>

<pre>　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　若宮貞夫━━━━正
　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　橋本卯太郎　　　┣━━━橋本大二郎
　　　　　　　　　　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　┣━━━橋本龍伍
　　　　　　　　　　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　　　┏真都　　　　　┃
　　　　　　　　　　┃　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　┣石光真清　　　┃
　　　　　石光真民━┫　　　　　　　┣━━━橋本龍太郎
　　　　　　　　　　┣石光真臣　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　　　┃　　　　　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　　　┗石光真澄　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　　　大野緑一郎━━━春　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　橋本龍伍　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　┏正　　　　　　　　　　┃
　　　　　　若宮貞夫━━┫　　　　　　　　　　　┣━━━橋本岳
　　　　　　　　　　　　┗章　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　┏中村基一　　　　　　　　┃
　　　　　中村雄次郎━┫　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　┗中村貫之　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　┃（義妹・章と再婚）　┃
　　　　　　　　　　　　　┃　　　　　　　　　　┃
　　　　　　阪谷芳郎　　　┣━━━妙子　　　　　┃
　　　　　　　　┃　　　　┃　　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　┃　　　　┃　　　　┃　　　　　┃
　　　　　　　　┣━━━八重子　　　┣━━━━久美子
　　　　　　　　┃　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　┃　　　　　　　　　┃
渋沢栄一━━━琴子　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　加納久宜━┳━加納久朗━━中村久次
　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　┗━夏子━━麻生太賀吉　┏麻生太郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　┃　　　┃
　　　　　　　　　　　　　　　　　┣━━━┫
　　　　　　　　　　　　　　　　　┃　　　┃
　　　　　　　　　　　吉田茂━━和子　　　┃
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┗信子
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃　　　┏彬子女王 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┣━━━┫
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃　　　┗瑶子女王
      　　　　　　　　┏三笠宮崇仁親王━━━寬仁親王
明治天皇━━大正天皇━┫ 　
　　　　　　　　　　　┗昭和天皇━━━━━━今上天皇
</pre>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

== エピソード ==
小学校はなんとか卒業することができたが開成中学に進むころから闘病生活に入った。闘病生活の間、独学で勉強し検定で開成中学を卒業した。病院から退院した時には[[旧制高等学校|高等学校]]の受験資格を得ていたため、第一高等学校に進学するべく願書を提出した。しかし[[身体障害者]]は軍事教練ができないという理由で願書は突き返された。そのため障害者にも門戸を開いていた慶應義塾に入学した。しかし、国立学校への未練があり、慶應に入学したのと同時に連日[[文部省]]に通い直談判した。その結果、受験資格の認定制度が改定され、自分で行動できる障害者にも国立の高等学校、大学への受験資格が与えられるようになった<ref>『仕事師と呼ばれた男　橋本龍太郎』 12-14頁</ref>。

龍伍について長男[[橋本龍太郎|龍太郎]]は｢物心つくころから私には父におぶってもらったり抱いてもらったという記憶はありません。いつも松葉杖かステッキをついている父の後を追って歩いた、そんな思い出だけが残っています｣<ref>『<small>仕事師と呼ばれた男</small> 橋本龍太郎』11頁</ref>。｢私が自分の父親を尊敬し今でも誇りに思うのはそのハンディキャップにもかかわらず自分の人生を自分の力で切り拓いていった､その強靭な精神力です。そして絶対に物事に対してあきらめを持たなかった。本当に挑戦者という姿勢を生涯とり続けたことです｣と述べている<ref>『<small>仕事師と呼ばれた男</small> 橋本龍太郎』15頁</ref>。

思想問題で官憲に追及されている友人を下宿にかくまったことにより、[[警察]]に2度[[拘留]]された<ref>『岡山県歴史人物事典』</ref>。

自身の体が不自由だったことから、「'''[[政治]]は弱い人のためにある'''」を政治信条にしていた。

== その他 ==
[[宗教]]は[[臨済宗]]。

[[神奈川県]][[鎌倉市]]、東京[[港区 (東京都)|港区]]麻布仲の町、岡山県吉備郡秦村字秦下（現・[[総社市]]）等に[[居住]]した。

== 参考文献 ==
* 「[[山崎始男]]君の故議員橋本龍伍君に対する追悼演説」『衆議院会議録情報　第042回国会　本会議　第1号』、1962年。
*　大月雄三郎　『総社市人物風土記』　1983年　200-201頁
* 岡山県歴史人物事典編纂委員会 『岡山県歴史人物事典』 1994年、790-791頁。
* [[浅川博忠]] 『仕事師と呼ばれた男　橋本龍太郎』 [[東洋経済新報社]]、1995年、11-24頁。
* [[俵孝太郎]] 『日本の政治家　親と子の肖像』 [[中央公論社]]、1997年、351-377頁。
* [[秦郁彦]] 『日本近現代人物履歴事典』 東京大学出版会、2002年、402頁。

== 関連項目 ==
* [[吉田13人衆]]
* [[吉田学校]]
* [[橋本龍太郎]]
* [[橋本大二郎]]
* [[橋本卯太郎]]
* [[橋本岳]]
* [[総社市]]

==脚注==
<div class="references-small"><references /></div>

== 外部リンク ==
* [http://daichanzeyo.la.coocan.jp/history.html 橋本龍伍について（橋本大二郎による自分史）]
* [http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/042/0512/04212080512001c.html 『衆議院会議録情報　第042回国会　本会議　第1号』　山崎始男君の故議員橋本龍伍君に対する追悼演説]

{{先代次代|厚生大臣|第24代：1951年 - 1952年<br>第36代：1958年 - 1959年|[[黒川武雄]]<br>[[堀木鎌三]]|[[吉武恵市]]<br>[[坂田道太]]}}
{{先代次代|[[行政管理庁|行政管理庁長官]]|第7代：1951年 - 1952年|[[広川弘禅]]|[[木村篤太郎]]}}
{{先代次代|[[文部大臣]]|第81代：1958年 - 1959年|[[灘尾弘吉]]|[[松田竹千代]]}}
{{文部科学大臣}}
{{厚生労働大臣}}
{{DEFAULTSORT:はしもと りようこ}}
[[Category:衆議院議員]]
[[Category:岡山県の政治家]]
[[Category:東京都の政治家]]
[[Category:日本の財務官僚]]
[[Category:日本の閣僚経験者]]
[[Category:障害を持つ人物]]
[[Category:総社市|人はしもとりようこ]]
[[Category:1906年生]]
[[Category:1962年没]]